特別講師
今日も三話あげます。
感動の再会と抱擁を終え、気恥ずかしそうにしながらイズの方から身体を離す。
「お爺様に紹介したい人がいるのですが良いでしょうか?
「イズが世話になっている相手ならば是非とも紹介してもらいたいな」
「ありがとうございます。
先生、もう大丈夫ですよ」
イズが外に向かって声をかける。
すると、扉が開いて先ほどナグモを案内した女性、エリーが中へと入ってきた。
「貴女は先ほどここまで案内してくださった……」
「お爺様、初めまして。
この学校の保険医をやっているエリーと言いますわ」
「なんと、それでは先ほどイズの話に出てきておった元勇者とは貴女の事でしたか。
イズの事といい、先ほどの事といい重ね重ねお礼を……」
先程は孫の安否が心配で気にかける事が出来なかったが、エリーという女性は佇まいに一切の隙がない。
「いいんですよ。
イズちゃんのお爺様なら、私にとってもお爺様ですから。
私も祖父に接するように致しますので、お爺様も是非イズちゃん同様に孫に接するように気軽にしてください」
「ふむ……なるほど……まさか!?
イズよ、そう言う事なのか?」
「お爺様は察しが良くて助かりますね。
ええ、先ほどお話しした私の大切な人です」
祖父の質問に頷きながら答えるイズ。
「おお…‥何とめでたい日だ。
孫が帰ってきただけでなく嫁まで連れてくるとは!
今なら何でもできそうな気分だぞ」
「それならばお爺様に是非お願いしたいことがあるのですが……」
こうして感動の再会から一週間が経った頃である。
「皆さんに特別講師を紹介したいと思います。
ナグモさん、入ってきてください」
騒つく教室内の扉を開いて入ってきたのは小柄な老人であった。
紺色の胴着と呼ばれる衣服を着用していることから、生徒達は和の国の人ではないかと考えた。
「この方はナグモ・アラタさんと言い、武術・武芸に精通しています。
学校から見ても分かる通りに特に刀や槍、更には素手や扇と言ったら変わった物まで扱えるので、その類の武器の扱い方を学びたい方はナグモさんの授業を受けてください」
「紹介に預かったナグモと申す。
よろしく頼む」
ナグモが生徒達に挨拶をすると、躊躇いがちながら拍手が送られる。
ただ、一部の者は本当にこんな小柄な老人が武術を教えられるのかと疑問に感じている目をしているが。
だが、その考えはすぐに間違いだと知らされる事であろう。
何故なら、この学校の講師になれる人物がただの老人であるわけがないのだから。