再会
3-3話です。
普通の行程であれば一月はかかるであろうものを、その半分という驚異的なスピードで踏破したナグモはエルリック冒険者育成学校の前に来ていた。
「ここに孫が、イズモが……」
嬉しさと悲しさが混じる感情のままに校舎を見上げる。
そんな時に前から赤い髪の白衣を着た美しい女性が近付いてきた。
「ナグモさんですね、お待ちしておりました」
「何故、ワシが今ここにいると分かったのかね」
「イズちゃ……イズモから、貴方が変わっておられないのであれば、必ず半月程で到着すると。
ですので、手紙を送った日から逆算して当たりをつけていたと言うわけです」
「なるほど……どうやら本当に孫はこちらにおるみたいだな」
「ご案内いたします」
「よろしく頼む」
自分の旅のスピードを当てれるような人物は関係者以外いないだろう。
そこから出雲が本当にここにいると言うことは間違いないだろう……だが、そうであるならば何故直接迎えに来ないのだろうか?
まさか、動けないような事になっているのではないか?
そんな心配事が頭の中を巡る……が、すぐに目的の場所に着いたらしい。
保健室と書かれた部屋の札を見て、やはりかと心が沈む。
「どうか気を強く持ってください。
どのような姿になっていても、あの子はお爺様の孫なのですから」
「あんた、いい女だな。
分かった……ワシも覚悟を決めたぞ」
そう言ってナグモは勢いよく扉を開く。
保健室の中を見渡すが、想像していたような事はなく、ベッドはもぬけの殻であって。
代わりに目の前に1人の可憐な少女が座っており……
「お久しぶりです、お爺様。
ご無沙汰しており申し訳ありません」
薄紅色の着物に色とりどりの花の模様が描かれている帯をつけた少女は、ずっと会いたかった孫の面影を感じる顔で微笑みつつ頭を下げた。
「お……おお……お主はイズモなのか?」
「ええ……ですがこれからはイズとお呼びください。
私はこの姿になった時にあの家を継ぐことという未来を捨てました」
「詳しく聞かせてもらえるのだろうな?」
「もちろんです……時間はたっぷりあるのですから」
こうしてイズはナグモに全てを話した。
どうしてこの姿になったのか。
今はどのように過ごしているのか。
何故、今になってナグモに連絡を取ったのか。
その話を黙って聞いていたナグモだが、話がひと段落すると、深く息を吐く。
「イズよ、一つだけ尋ねたい」
「はい、何でもどうぞ」
「いま……幸せか?」
「自分の居場所があって、大事な人がいますからね。
とても幸せですよ」
「そうか……それなら良かった」
そう言ってナグモは涙を流しながらイズの身体を抱きしめた。
イズも背中に手を回しナグモの胸に顔を埋める。
キラリと光る涙を隠すようにしながら。