謝罪の仕方
結果的にお咎め無しという結末に落ち着いた今回の騒動。
勝利したクレアの元には様々な生徒達が詰めかけたのだが、疲れているからとシゾンがその全てをブロックして自室へと連れて行った。
「ふぅ〜流石に目立ち過ぎたかのう」
二つ並んだベッドの片方に腰掛けて一息つくクレア。
「お爺ちゃん……それ、本気で言ってる?」
そんなクレアにやや呆れ顔なシゾン。
「むぅ、ひょっとしてこれぐらいならば然程目立って……」
「逆だから!
エルフの新入生で主席ってだけで目立ってるの。
それで初日から絡んできた冒険者上がりの新入生。倒しちゃうんだから」
「あれは仕方なかろう。
それにワシが倒したわけでは無く勝手に倒れただけじゃぞ」
「それでも見てる人はお爺ちゃんが倒したってイメージしか出ないよ。
……まぁ、最初からこうなるって分かってたから良いんだけどね」
「苦労をかけるのう」
そう言ってモゾモゾと布団の中に潜り込もうとするクレア……の首根っこをむんずと掴まえるシゾン。
「クレアちゃん、制服のままでお布団に入ったらシワになるでしょ!
それにお風呂もまだなんだから」
「いや…….しかし、ワシも疲れてしまって」
「だーめ!
クレアちゃんは磨けば磨くほどに光るんだから、学校生活の間に徹底的に指導するからね」
こうしてお風呂の入り方から髪や肌のケアまで徹底的に指導されてヘロヘロになったクレア。
その様はテッドと決闘していた時よりもキツそうだっという。
次の日……テッドはやや遅れて教室にやってきていた。
中から聞こえてくる会話から目的の人物がいることは分かっている。
(よし……大丈夫だ……いける筈……)
軽く深呼吸をし、覚悟を決めて扉を開く。
勢いよく開かれる扉に生徒達の注目が集まる。
何故かその表情は驚きの顔が多いようだが……そんな視線の中でテッドは目的の人物、クレアを見つける。
クレアの元に歩いていくと、シゾンが立ちあがろうとする……が、すぐにクレアが手で制した事で着席した。
その様子を目で追いつつもクレアの前にやってきたテッド。
「昨晩は本当に失礼な事をした。
申し訳ない!」
勢いよく頭を下げるテッド。
「うむ、確かに謝罪の言葉受け取っておこう。
皆の者も昨日の件でテッドを責める事がないようにのう」
既にクラスの中心人物となり、当事者でもあるクレアが許したという事で文句を言うものはいなかった。
「本当にありがとう。
そして、これからは共に学ぶ学友としてよろしく頼む」
「うむ、こちらこそなのじゃ。
……それでなのじゃが、一つ聞いても良いかの?」
「ああ、何でも聞いてくれて構わないぞ」
「お主……なんで丸坊主なのじゃ?」
クレアが指摘したようにテッドのツンツン赤髪は綺麗に刈り取られており、肌色の頭皮が顕になっていた。
「ああ、反省しているのを形にするのに一番分かりやすいからってアドバイスをもらってな」
はははと楽しそうに笑う彼に対して、誰も彼もが可哀想なものを見る目を向けていた。