保健室の日常
「ただいま戻りました」
「お疲れさま……って、あら。
救出してきた生徒はどうしたの?」
「舐めた事言ってたのでマリア先生に連れて行かれました。
後で来ると思うのでベッドは二つ空けておいてください」
保健室に帰ってきたらイズは、この部屋の主であるエリーの問いに答えつつ奥へと向かう。
カーテンで区切られたスペースの中にはロッカーがあり、そこで着ていたバニースーツを脱ぎ、ロッカーに準備されていた衣服に着替える。
今度の衣装は膝上で切れているやや短めなピンク色のナース服で、その下からは白いストッキングが履かれていた。
さらにロッカーから一枚のリボンを取り出して髪に向けると、リボンが1人でに動き出してイズの髪をまとめてアップに結んでいく。
突然、カーテンがシャーっとスライドしていく音がする。
イズがそちらを振り向くとエリーが楽しそうな顔をしながら立っていた。
「人が着替えている最中に入ってくるのはマナー違反ですよ」
「あら、イズちゃんと私の仲じゃない……ねぇ」
そう言ってエリーは少しずつ前へと歩みを進め、イズを挟む形でロッカーに右手をつく。
エリーは身長が180センチを超える高身長の美女であり、小柄なイズの身体は完全にエリーの影に隠れてしまった。
「こんな時間から盛らないで下さいよ」
「こんな時間じゃなければ良いのかしら?」
「そ……それは……」
今まで全く表情が動かなかったイズの顔が僅かに赤らみ俯く。
そんなイズの顎に指を添え、強引に上を向かせて目を合わせるエリー。
「残念……私は今が良いの」
そうして顔を近づけるエリーに観念したようにイズは目を閉じる。
そのまま唇が触れ合おうかと言う距離まで近づいたところであった。
ビーーーーーーーーー!!
室内に警報のような音が鳴り響く。
「もう……またなの?」
「最近増えてきてますね。
また行ってきますよ」
「いえ……今度は私が行ってくるわ。
楽しい時間を邪魔されてイラッとしちゃったんだもの」
笑顔でそう話すエリーだが、その身体からは憤怒のオーラが溢れていた。
「はぁ、それじゃお願いしますね。
……気をつけて」
「ふふ、大丈夫だと分かっているのにそんな事言っちゃうイズちゃんってば本当に可愛いわね。
サクッと終わらせてくるわね。
続きは……」
「先生が戻られる頃にはさっきの2人が運ばれてきます。
それに、その時間からはダンジョンで怪我した生徒達もやってくる頃なので絶対に無理ですよ」
「ちっ……仕方ないわね。
夜のお楽しみに取っておくから」
「はい、私も楽しみにしておきますので。
早く行ってください」
「その言葉忘れるんじゃないわよ!!」
半分冗談で言った言葉にイズがはにかみながら答える。
その事でテンションが限界突破したエリーは猛烈な勢いでダンジョンへと向かっていった。