どっちがお姉ちゃん?
エルリック冒険者育成での授業は基本的に選択制となる。
平日5日間は事前に自分が提出したスケジュールに基づき行動していく。
土曜日はダンジョン探索となり、日曜日は休日となっている。
その為に担任というものは飾りだけのものであり、イベント時の引率やホームルームでの連絡事項を伝える程度の仕事しかない。
それでも、今年初めて担任になると言われれば不安になる生徒も出てくるであろう。
「皆さんが不安になる気持ちは分かります。
しかし、エリー先生は担任するのが初めてなだけで、この学校での教師経験は長く豊富なので安心してください。
それと私もサポートするので皆さんは何一つ心配することはありませんよ」
「流石イズちゃん、ナイスフォロー!」
こうしてイズのサポートも交えて学園の説明が為されていく。
最後に全員に学生証が配られた所で説明は終わり。
この日のホームルームは全て終了となった。
「それじゃ各自寮に向かってちょうだい。
学生証と一緒に渡した鍵が貴方達の部屋になるわ」
寮は基本的には一人部屋なのだが、事情があって二人部屋を希望する者達には二人部屋が与えられる。
クレアとシゾンは勿論二人部屋であった。
「へぇ、二人は同じ部屋なんだ」
「そう言えばクレアちゃんとシゾンちゃんってどういう関係なの?」
「ワシらはそ……」
「実はクレアちゃんはお父さんが保護してきたの。
それで私の家で預かる事になって養子に迎え入れたから……姉妹みたいなものかな?」
クレアが正直に祖父と孫と答えようと察知したシゾンは、クレアの発言を阻みつつ事前に取り決めていた設定を口にする。
クレアを養子にしてクレア・アンデルストと名乗らせる事によって、ハイエルフである彼女の身を守る作戦であった。
簡単に説明するならば、クレアに手を出したら大冒険者一家であるアンデルスト家が黙ってないぞ!と、言っているのである。
「へぇ、そうなんだ。
じゃあ、クレアちゃんはお姉ちゃんの言うことをちゃんと聞くんだぞ」
「私達はこっちだからまたね〜」
寮は男子寮、女子寮、二人部屋寮に分かれている。
クラスの女子達と別れた2人は自分たちの寮の方へと向かっていった。
「全く……何故ワシが妹になっておるのじゃ」
「女の子としては私の方が断然年上なんだから当然でしょ」
「むう……それを言われると何とも」
シゾンに毎日お世話をされているクレアとしてはそう言われると何も言い返せない。
シゾンとしても毎日お世話をしている内に、クレアは祖父というよりも、手のかかる妹のような存在になっていたのである。
そんな事を話しながら寮へと向かっている時だった。
「やい、チンチクリン!
俺と勝負しやがれ!!」
そんな折に唐突に彼女達を……いや、クレアを引き止める声が聞こえた。