インチキと現れた担任
3-3です。
直前まで嫌がっていたとはいえ、そこは80年生きた年の功というやつであろう。
クレアは問題なくスピーチを終え、大量の拍手と共に壇上を後にした。
シゾンと共に教室に移動すると、早速同級生の女の子達に囲まれる事になったクレア。
「スピーチとっても良かったよ!」
「肌キレー」
「銀色の髪の毛も艶があって素敵だね」
「ぬおおおお、な、なんじゃこれは」
「あははは、クレアちゃん早速モテモテだね」
クラスの女子に揉みくちゃにされるクレアを楽しそうに見守るシゾン。
彼女にとって自慢のお爺ちゃんが認められるのはとても嬉しい事なのだ。
因みに女子としての手入れを全く知らなかったクレアが、これほどまでに周りの女子から褒められる肌や髪をしているのは全て彼女の手腕である。
髪の毛が邪魔だから切ると言い出した時にそれを止めたシゾンの功績はとても大きいだろう。
黄色い声がわいわいと盛り上がっている時だった。
「ケッ!そんなチンチクリンが代表だなんて。
どうせ何かインチキでもしたんだろ!?」
唐突に響く声。
見ればそちらの方には赤い髪をツンツンに固め、鼻の頭に絆創膏を付けた生意気そうな少年が座っていた。
「インチキなんて……」
自慢のクレアを馬鹿にされた事でシゾンが激昂して反論しようとする。
だが、クレアはそれを手で制した。
「よいよい……インチキと言えばインチキかもしれぬからのう」
「ほらな!
自分から認めやがった」
クレアの発言により男の子は勝ち誇った顔をする。
「うむうむ、何せワシは80年は生きておるからのう。
まだ若いお主達が持たない知識を持っていても仕方あるまい。
そう言った年月の蓄積という意味では同条件では無かったからインチキであるのう」
クレアの発言に教室の空気が凍りついた。
シゾンはあちゃ〜という感じで右手を開いて顔の前に置き、天を仰いだ。
しばらくは沈黙が続いた教室であったが……
「クレアちゃんってそんなに年上なの!?
やっぱりエルフだから?」
「見た目の割に落ち着いてるって思ってたけど!
これから色々と頼ってもいいかな?」
「のじゃロリ合法幼女キターーー!!」
クラスメイト達はそんなクレアのことを肯定的に受け止めてくれた……一名怪しい人物もいたが。
クレアが遥かに年上だと分かった男の子は面白くなさそうに窓の外に顔を向ける。
そんな時にガラガラと勢いよく扉が開かれた。
現れたのはスーツの上に白衣を羽織ったモデルのようにスタイルの良い赤髪の女性と、ピンク色のナース服を着た可愛らしい女の子の2人。
「はいはい、入学できてテンション上がるのは分かるけど先生が来たなら静かにしなさい」
赤髪の女性は教壇に立つとそう言いながらパンパンと手を叩く。
ナース服の女の子は黒板の左側、教室の端の方へと移動していった。
赤髪の女性に言われた生徒達は談笑を止めて大人しく自分に割り当てられた席へと座っていった。
「はい、よくできました。
今日から貴方達の担任となるエリーよ。
それでこっちの可愛い子は……」
「エリー先生の助手を務めているイズです。
エリー先生は今年から教員を務める事になりましたので、私がサポートをする事になりました。
どうぞよろしくお願いします」
イズがそう言って深々と頭を下げると、教室には僅かな動揺が走ったのであった。