エリーの悪巧みに乗っかるアンデルスト家
本日は土曜日なので3話更新します。
瘴気というものは生き物を蝕み、徐々に体力を奪っていく。
そんな瘴気に包まれた魔大陸から生還したクレーズ。
何故そんな場所から生還できたかというと、彼の体力が化け物だったからである。
瘴気で減った体力をポーションで回復させる……それを繰り返す事で探検を成功させてきたのである。
「そんな脳筋な師匠から筋力を取ったら何が残るんです?」
「その分魔力が上がっておるのじゃ」
「でも魔法使えないでしょ?」
「うぐぐ……」
そんなやりとりをしている2人を見ていてイズがふと気がつく。
「あれ、それじゃやっぱりここに来る時危なかったんじゃないですか?
帰り送った方がいいですか?」
「いやいや、それには及ばんよ。
実は今年の春から孫娘がここに入学する事になっておっての。
娘夫婦と共に手続きと下見がてらにここにやって来たという訳じゃよ」
「ああ……あの2人が一緒なら安心ですね」
クレアの娘夫婦は共に名高い冒険者であった。
にも関わらず、瘴気が晴れた魔大陸を探索したいからという理由からこの学校に入学し、しっかりと学んで卒業していったという経歴が残っている。
この学園の元生徒という事で2人もよく知っていた。
「孫娘って言ったらシゾンちゃんよね。
……あ、私いい事思いついちゃった。
ちょっと出掛けてくるからクレアちゃんのことよろしくね」
エリーは若干悪い顔をしてこの場を後にする。
「なんじゃなんじゃ……相変わらず落ち着きのない奴じゃのう」
「クレアさん、あれ絶対に碌な事しないですよ。
止めてきましょうか?」
「よいよい、好きにやらせておけ。
どうせ大した事ではないであろうよ」
「はぁ……私は忠告しましたからね」
そうして2人でお茶とお茶菓子を楽しみつつまったりしていたのだが、またドタドタという足音が聞こえてきた。
慌ただしく扉を開いたのは当然ながらエリーであった。
その手には何かの紙を持ち、後ろには15歳前後と思わしき少女を連れていた。
「クレアちゃん、許可降りたわよ!」
「何を言っておるのじゃ?
全く騒々しい……」
「春から貴女もこの学校の生徒よ!
シゾンちゃんと一緒に頑張って学んでいってね」
「ぶううううう!!」
突然の発表に思わず口に含んでいたお茶を吹き出すクレア。
向いに座っていたイズは冷静に手に持っていたお盆でガードしていた。
「ゲホゲホ……一体どういう事じゃ!」
そう言ってエリーが持っていた書類を強引に奪って中身を確認する。
それはクレアの名前が書かれた書類であり、アンデルスト家が後見人となる旨のサインまで入っていた。
慌ててエリーが連れていた少女の方を見ると、彼女はニコニコとした笑顔で、
「春からよろしくね、おじい……クレアちゃん」
と答えるのであった。
実はここまでがプロローグ的な話になります。
次回からはクレアを中心とした学園編に入っていくのでよろしくお願いします。