謎の銀髪幼女エルフ
「次はどこに行くのだ?」
「帰ります。
もうそろそろ先生も起きてくる頃でしょうから」
そう言って校舎の前に置いていた荷車を引いて歩き出す。
再び運動場の前を通るとトレーニングに参加している生徒の数が増え、マリアが熱心に指導を行っていた。
その様子を見つつ、購買部とは反対方向、校舎の左側の道を奥へと進んでいく。
やがて見えてきたダンジョンの入り口。
その中に入ると、奥の方……イズ達の家から言い争うような声が聞こえてきた。
「そんな自堕落な生活を送るように指導した覚えはないぞ、このバカ弟子が!!」
「私も貴方みたいなちんちくりんに育てられた覚えはないわよ」
後者はエリーの声であるが、前者の声をイズは聞いたことがない。
少女のような可愛らしい声が聞こえてきたのだが……ともかく、イズは慌出る事なく扉を開けて中に入る。
「ただいま戻りました」
イズが帰ってきたところで2人はぴたりと言い争いを止める。
2人のうちの片方、エリーは寝起きなのだろう。
胸元の開いた白シャツにパンツだけと言う非常にだらしない格好をしている。
一方で言い争いをしていたのは銀髪の10歳前後に見える少女であった。
髪の毛をサイドテールでまとめ、白のシャツ、黒いズボン、シャツの上に革鎧、背中にはマントを着けている、一般的な女冒険者の格好であった、
何も変わったところのない普通の少女である……尖った耳を除けばであるが。
イズは2人を無視してキッチンへと向かい、お茶を淹れた。
「お客様がいらっしゃっているのにお茶も出さないなんて何をしているんですか?」
「そんな事言われても……急にこの子が訪ねて……」
「言い訳は良いのでとりあえず着替えてきてください。
その格好は見苦しいですよ」
「う、分かったわよ」
エリーはそう言うと大人しく自分の部屋へと戻っていった。
「お見苦しくて申し訳ありません。
粗茶ですが……宜しければお客様も座ってお寛ぎください」
「お、おお、すまぬのう。
どうやらエルリックの奴はお主に頼りっぱなしのようじゃな」
少女が自然と出した言葉に、これまで無表情を保っていたイズの身体がピクリと動く。
エリーがエルリックだと言う事を知っているのは自分を含めて数人しかいないはずである。
そして自分のことも知っているような口ぶり……イズの頭の中に1人の人物が思い浮かぶ。
そんな訳がない……そう思いながらも思い当たった人物の名前を口に出さずにはいられなかった。
「もしかして……クレーズさんですか?」
「かっかっかっ、如何にも!
あのバカ弟子は気付かんかったようじゃが、流石はイズちゃんじゃな」
そう言って楽しそうに笑う姿、それは確かにエリーの師匠であるグレーズを彷彿とさせるものであった。
ちょいちょいナハトの言葉を書き直してたのは、このキャラと喋り方が被ってたからです。