エルリック冒険者育成学校
エルリック冒険者育成学校……10年前に魔大陸と呼ばれる広大な大地の瘴気を払った勇者の名を冠する学校。
瘴気が失われて誰もが自由に訪れる事が出来るようになった魔大陸を調査する為の人材を鍛える場所。
似たような教育機関があちこちに建てられたのだが、エルリック冒険者育成学校では他の学校にはない独自の教育方法があった。
それがダンジョン体験プログラムである。
学校側で運営・管理しているダンジョンを探索する事で、冒険の擬似体験をしてもらうというものである。
全寮制のこの学校では平日は訓練や座学の授業が行われ、土曜日にダンジョン。
日曜日は完全な休日となり、遊びに行く者や個人でトレーニングを行う者など充実した学生生活を行う事ができる。
そんな学園の運動場を、イズは2人の男子生徒と共に歩いていた。
「いや〜本当に助かったよ」
「ありがとな、イズちゃん」
軽いノリでお礼を言う2人に対して、イズは心底呆れたように溜息を吐く。
「はぁ………回復薬を忘れた挙句に突き進み、撤退時期を見誤ってこの時間からの救出要請。
貴方たち、このままじゃ卒業できませんよ」
「今回は油断したけど次は大丈夫だって」
「イズちゃんに心配されるなら寧ろもっとやっとくか?」
「何やら舐めた態度の生徒がいるらしいな……元気が有り余っているようだから特別に指導してやろう」
全く反省の色がない2人……その彼らの頭が何者かによっと鷲掴みにされる。
「げぇ……マリア先生……」
「い、今のは冗談で……」
「問答無用だ!
イズ殿、いつもご苦労様です」
「いえ、これも仕事ですから。
保健室のベッドは空けておきますので、みっちり扱いてやってください……マッスル・ウォーリアー先生」
「もちろん、お任せください。
この筋肉の誇りに懸けて彼らを立派に矯正させてみせましょう!
それでは失礼!!」
身長が2メートルを超えるジャージを着た大柄な男によって男子生徒は何処へか連れて行かれていく。
その過程で男子生徒達の悲鳴とマッスル・ウォーリアー……略してマリアの高笑いが聞こえてくる。
その後ろ姿を見送ったイズは
「帰ろ」
そう言って校内へと入っていくのであった。