其々の帰路へ(同じ場所)
「私の事は直接の関係無いから良いでしょ!
それよりも、お爺ちゃんはこれで大丈夫なのよね?」
「ああ、それは問題ないよ。
人格を切り替える必要はあるが…….そこは上手くやってくれたまえ」
クラリッサの質問にクレーズの方を見ながら答えるレーア。
「ワシにとっては孫娘が二人に増えたようなものじゃからな。
普段はクレアに任せて呼ばれた時にのみ応じるとしよう」
クレーズがそう言うと再び纏っている空気が変わったような気がした。
側にいる者を和ませる柔らかな空気は、いま中に入っているのがクレアだと言う事を理解させてくれる。
「ええっと……そう言う事になったから、これからもよろしくお願いしますね」
未だに引っ付いてぐりぐりと頭を押し付けるシゾンの頭を撫でながらも、なんとか立ち上がって周りに頭を下げるクレア。
全員が安堵したような表情を浮かべつつも拍手でクレアを出迎える。
こうして無事に学園を卒業する事が出来た8人。
荷物をまとめ上げて其々の進むべき道へ向かい別れる……筈であったのだが。
「ねぇ……何でみんな私の所の馬車に乗ってるの?」
アンデルスト家からの迎えの馬車に乗り込んだのは共に試練後のダンジョンを駆け抜けた面々であった。
「私達は卒業後はアンデルスト家のメイド兼冒険者として雇ってもらえる事になってたからね」
「シゾンさんのご両親にクレーズ様からもご許可は頂いておりますわよ」
「え、聞いてないけど……お爺ちゃん?」
シゾンがクレアの持つ刀に睨みを効かせると、刀が一瞬ビクッと動いた気がした。
「わたしとデアンは元々こちらでエルフと人間との共存の橋渡しをしたいと考えていました。
その為にもっとも理解のあるアンデルスト家を大使館として活動するように言われていたのです」
「それとエルフというだけで何かと狙われるからな。
在学中は学園が後ろ盾になっていたわけだが、卒業したらそれが無くなるのを心配したクレーズ殿の助言で後ろ盾になってもらうという話しだったのだが……初耳も言った顔じゃな」
「そんなそんなまさか〜ねぇ、おじいちゃん?」
今度は笑顔で対応しているが目元は全く笑っていない状態で刀を見るシゾン。
刀は小刻みにブルブルと震え始めていた。
「俺はクレーズ様に憧れて冒険者になったからな。
次に学ぶのはここだって決めてたからついていく事にしたんだよ。
何の話も通して無いけど、許可をもらうまで諦めないぜ!」
「うーん、これに関しては関与してないみたいだね」
シゾンの言葉に頷くように刀は縦に数回揺れた。
「こら、あんまりおじいさまを虐めないの!
私達のことを考えてくださってのことなんですから」
クレアがそう言って刀を庇うように手を当てて撫でる。
心なしか喜んで見えるのは気のせいではないのだろう。
こうして卒業後も道を同じくした7人。
クレアを中心としたこの7人のパーティは後に魔大陸へと向かい新たな伝説を創り上げた!……その予定である。