大団円と神格
「クラリッサさんが神様かどうかは一先ず置いておくとして……全ての問題は片付いたという事でいいんですね?」
「ああ、彼女達にも説明したし……この刀も君達に返そう」
イズに問われたレーアは頷き、持っていたクレーズの魂が封じられた刀をクレアに差し出した。
「え、あ……」
クレアはその刀に触るのを躊躇していた。
思えば彼女はクレアとしての人格に目覚めた時からこの刀を触ろうとせず、遠ざけていたように見える。
それはこれを触る事で何となくだが良くないことが起こると考えていたからであろう。
そして、現在では自分の人格とクレーズの人格が入れ替わる事が判明してしまったので思わず躊躇してしまったのだろう。
「大丈夫。
あの時は強制的に変わったけれど、君が望まない限りは人格を入れ替わるつもりはないらしい。
だから、これは君が持つべきなんだ」
「は……はい」
恐る恐ると手を伸ばし……鞘に指が触れた事で一瞬ビクッと身を竦めた。
だが、それで何も起こらないことを確認が出来、クレアは辿々しくも渡された刀を腰に佩いた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「うん……大丈夫みたい」
「お爺ちゃんも大丈夫なのかな?」
「ん……ちょっと待って」
クレアは目を閉じて心の中でクレーズに呼びかける。
そして次に目を開いた時、周囲で見守る者達ですらその雰囲気が全く異なるものになっているのが分かった。
「うむ、ワシも全く問題はないぞ。
シゾンよ……長い時間すまなかったな」
「ううん、お爺ちゃんが無事ならそれで良いよ。
お姉ちゃんもお爺ちゃんも、これから先も一緒に居られるのならこんなに嬉しいことなんてないから」
シゾンが涙声で抱きつき、クレーズが優しく抱きしめる様子を皆が微笑ましく、一部は目頭が熱くなるのを感じながら見守っていた。
「色々と言いたいことや思うことはありますが……無事に解決したので野暮というものでしょう。
それで先程の話なんですが、クラリッサさんも神様なんですか?」
「それはそのう……私にもよく分からないというか……」
「神格を得るには人々に崇められたり恐れられたりしている必要があるのだがな……クラリッサは幽霊になった事件をきっかけに広く伝承として話が伝わってしまったんだよ。
更にエメリアと共に様々な土地を旅して色々とやらかした伝説も各地に残っていてるからね。
その結果、神格を得ているのだよ。
まぁ、誰よりも力が強い幽霊程度の違いしかないがね」