アドゥラと散歩
3-3です。
細かい表現を修正しました。
「それではぶべっ!?」
うまく着地して部屋に入ろうとするアドゥラの顔面に何かが飛んでくる。
「今から部屋の掃除しますから先生は立ち入らないでください。
いま投げたのは私の従魔のナハトです。
掃除している間は預かっておいてくださいね」
「おいおい、イズ君。
それは……」
「あ、主人よ……」
「先週も掃除したのに、一週間後にこの状態にされている僕の身にもなってくれませんかね?」
明らかに怒気を含んだ言葉に、アドゥラはピタリと足を止める。
心なしか両手で抱えているナハトがカタカタと震えているような気がするが、それがアドゥラが震えているのか?
それともナハトが怯えているのか?
はたまた、その両方なのかは分からない。
ただ、初めて会ったばかりながら1人と一匹の心はシンクロしたようで、
「じゃ、邪魔をしては悪いからな。
ナハト君とやら、散歩に行こうではないか」
「わ、我もちょうど散歩に行きたい気分だった。
アドゥラとやら、案内を頼むぞ」
そう言って逃げるようにその場を後にしたのであった。
「案内と言っても今日は休日だから見るべきものも少ないのだがね」
ナハトを抱えてスタスタと歩くアドゥラ。
彼女が言うように校舎内は閑散としており、人の気配は少なかった。
このまま何もなく校舎内を回り終えてしまう……そう思った矢先である。
「きゃあああああ!」
「の、覗きよ!!」
女生徒の叫び声が聞こえてきた。
「ふむ……どうする?」
「どうするも何も……お主は教師なのだからトラブルなら行かねばなるまい」
「それはそうなんだが、今の私では役に立てる事は少ないぞ」
「お主、それでよく教師が務まるな」
自信満々にそう言い放つアドゥラに呆れ顔をするナハト。
「仕方ないではないか。
慌てて部屋を出てきて眼鏡を忘れてきたのだよ。
ぶっちゃけ何も見えん」
「その割にはスタスタと歩いておったが」
「大まかな全体像と人の気配は読めるからね。
しかし、事件の解決にこのボヤけた視界が役に立つとは思えんよ」
「その分は我が手伝ってやるから、とりあえず向かうのだ。
お主とてあそこに戻りたくはなかろう」
「確かに……今の時間ならばまだ掃除は終わっていないだろう。
ここで戻るのは命を投げ捨てる行為か」
納得したアドゥラは叫び声がした方へ歩き出していった。