入学式の続き
シゾンが加わった事で形成逆転した戦い。
あっという間に追い込まれたクレーズであったが、本人は満足あゆらはきのそうな笑顔を浮かべていた。
「皆の者の強さ、よく分かった。
皆、本当に強くなったものじゃ。
最後に一つだけ、見極めておきたい事がある」
そう言いながらクレーズが大きく後ろに下がった事でシゾン達も一旦攻撃の手を止めた。
「テッドよ……あの日の続き。
今なら見せてくれるのではないか?」
「へへ……あの時に心を入れ替える事が出来た。
そして、その時にできなかった事を恩人で憧れでもある貴方に見せられるのは光栄という他ないな」
テッドが手甲を打ち鳴らすと、その拳の先から炎が漏れ出てくる。
「あの時は制御出来ずに暴走したわけじゃが……いまならイケるであろう?」
「ああ、勿論だ!」
拳から噴き出る炎はまるで意志を持っているかのように形を変えているが、その動きは統率が取れておりテッドの能力の制御下にある事がよく分かる。
「先ずは挨拶代わりだな」
テッドの両手から勢いよく炎が吹き出し、渦を巻いた2本の炎の柱がクレーズに向かって飛んでいく。
それを避ける事なく仁王立ちで待ち構えるクレーズ。
2本の炎の柱がクレーズに当たる……その直前に向きを90度変えて上方向へと向かっていき消えていった。
「うむ、問題なく使いこなしているようじゃな」
「ああ、ここからは本気でこの能力を使わせてもらうさ」
こうして、2人は持てる力の全てを振り絞って入学式の続きを始める。
それは何かを試すような戦いでも、劇的なラストバトルでもない。
ただ、2人の男が自分達が楽しむ為に殴り合っているだけに見えた。
そんな2人を女性陣は遠くから座って鑑賞していた。
「あれ、放っといていいの?」
「お爺ちゃん、見込みのある人を見かけたらああやって自分の手で殴り合わないと気が済まない人だから」
「でも、身体はクレアさんの物なんですよね?」
「ああ、その辺りの怪我を心配しているなら無用だ。
このエリアに限りは外的な損傷は与えないし、もし何かあっても私の責任で全て治す事を約束しよう」
「貴女、よく堂々と隣にいられるね」
会話に加わってきたのは、いつの間にか隣で同じように鑑賞していたレーアであった。
「まぁまぁ、言いたい事は分かりますが全部理由があってのことですから。
怒るのはそれを聞いてからでも遅くはないでしょう?
それと、そこの2人も顔を上げなさい。
私は只のダンジョン管理人レーア。
それで良いではありませんか」
いつからかは分からないが、オヴァーニとデアンはレーアに向かって頭を下げて礼をしていた。
「仰せのままに」
だが、レーアの言葉で頭を上げた後はシゾン達の元へと戻っていったのだった。