自問自答
(私は何をやっているの?)
仲間達が祖父であるクレーズと戦っている中で全く動けずにいるシゾン。
(いま動かないとダメだって頭では分かってる……でも、どうしても身体が動いてくれない)
戦いの末に大好きな祖父か姉を失う覚悟はしているつもりだった。
だが、大好きな姉の身体を使って祖父が敵になるなどという想定は全く行っていなかった。
考えが甘いと言われればそうなのかもしれない……だが、実際にこんな非現実的な事が起こるなど誰が予想出来るだろうか。
仲間達も祖父もシゾンには何の声もかけはしない。
その余裕が無いだけなのかもしれないが、それが彼女の心の中で動かなくて良い言い訳となっていた。
辛いからこのまま何もせずに残った結果を受け入れよう……お爺ちゃんとは戦えないし、このまま負けても勝ってもどちらかはきっと戻ってくる。
そんな都合の良い言い訳がシゾンの中で渦巻いていた。
だが……
(本当にそれで良いの?)
それを否定する心も残っていた。
(貴女の姉は自分が消えるかもしれないのに、ここまで笑いながらやってきた。
貴女の祖父は急に姿が変わったにも関わらず、それを受け入れて生きていた。
そんな強い2人に憧れた貴女が弱いままで本当にいいの?)
否定する心は、言い訳が渦巻いていたシゾンの心に少しずつ染み渡っていく。
(ここで逃げたら二度とあの背中を追い続ける事はできない。
対等に肩を並べる権利もない。
それでもいいの?)
否定する心がどんどんと強くなり、シゾンの中の弱い心の居場所を奪っていく。
(貴女は憧れの祖父と姉の顔を2度とまともに見れなくなる。
それでもいいの?)
「よくない!!」
否定する言葉がシゾンの心の中を支配して、感情に任せたままに叫ぶ。
そして、シゾンの代わりに盾の役割を担っていたテッドを狙った一撃を盾で受け止めた。
「私は!お姉ちゃんとお爺ちゃん……2人の尊敬する人に並んで対等になる為にここで逃げたりしない!!
……みんな、遅くなって本当にごめん」
「へ、自分で答えを出せたんなら上等だろ」
シゾンがカバーした事で息を吹き返したテッド共にクレーズの攻撃を捌いていく。
「それでこそ私のライバル!
信じてましたわ!!」
「その割には気にして攻撃の精度が落ちてたけどね。
信じてるかどうかは右に同じって事で」
2人が捌きに回った事で攻撃に専念することが出来るようになったメローヌが大剣を全力でぶん回し、ファモは今まで牽制で放っていた弓矢をクレーズに向けて放つようになった。
「私達も必ず立ち直ってくれると信じていましたよ」
「エルフからしたら短い付き合いなのかもしれぬが……ここまで濃く付き合った相手はおらんかったからな。
……必ず立ち直ると信じていたぞ」
オヴァーニとデアンもシゾンの復活を機に息を吹き返し、より高度な魔法の詠唱に注力する。
たかが1人……だが、その1人が加わった事で均衡は崩れ、流れは完全にシゾン達の方へと傾いていくのであった。