最後の戦いに向けて
延長戦とも言える探索に入ってから数日間……タイムリミットが迫るものの、シゾン達は極めて順調にダンジョンを攻略していった。
46階層から始まった探索も遂には59階層まで辿り着いていた。
「時間的にこれ以上深くなると無理なんだよね」
「キリの良さから見ても次がそうなのでは無いでしょうか?」
前衛を委ねられた2人が地図を見ながら相談をしていた。
46階層までしかエレベーターが通じていない事から各階層の階段の位置と最短の距離を調べて時間効率を上げて進んでいく事になっていたのだが、それでも限界はあった。
ダンジョンの管理人は攻略出来ない構造にはしていないだろうというのは度々相談に乗ってくれるイズの弁である。
また、最下層をキリの悪い数字にはしないであろうという予想も立てていた為、1日で降りれる時間的猶予を考えると次の60階層が最下層ではないかと考えたのである。
「つまり、60階に降りる前に出来る限りの回復と補給を済ませてから進めって事だな」
「それと覚悟の準備だな。
何が飛び出してくるか分からん以上は何が起きても慌てない心構えが必要であろう」
「でも、今の私達なら大丈夫ですよね!
ここまで順調過ぎるくらいですし……あいた!?」
「たわけが。
それが油断というのだ」
胸を張って自信満々に言うオヴァーニにの額をデアンがデコピンして嗜める。
「まぁまぁ……実際ここまで特に苦労していない訳だしね。
イズちゃんも本来なら卒業する程度の力しか無い生徒には向かわせることが出来ない場所って言ってたじゃん。
そんな所を私達が難なく攻略してるってのは自信になるよね」
「実際、それほどの場所かと言われるとピンと来ませんわね」
「正直、ここにおる者達はとてつもないレベルだと思う。
この若さでここまで辿り着くものかと感心する程にな……だが、それに加えてクレア殿のサポート能力が余りにも大き過ぎる事を忘れてはいかん」
デアンの言葉に全員の視線が一斉にクレアに集まる。
当の本人はそんな事は全く気にせずにパフェを口に入れてはご満悦な表情をしているのだが。
「実際あのサポートがあるのと無いのでは全然違うと思いますわ」
「ああ……正直、あの強化が当たり前になっちまったら恐ろしいってのはあるな」
「そういう事だ。
何らかの手段で封じられた時なども考えて対策を施しておくべきだと思うぞ」
こうして、当の本人以外が真剣に話し合い、最下層に向けての準備が整ったのであった。