ある男の集大成
月日は流れて卒業試験の日。
シゾン達のチームは極めて優秀な成績で40階層までを駆け抜けていった。
購買部で雇ったゴーレムを混えつつ作戦会議を行う。
その彼女達の近くでは1人で黙々と準備をする学生の姿があった。
そう、ここまで本当にソロでやってきたテッドである。
彼は誰の力も借りず、サポートのゴーレムを雇うことすらせず、遂に40層までの踏破を成し遂げたのであった。
彼はクレア達以上に入念な準備を心がけていた。
というのも、この卒業試験は一発勝負である。
制限時間に間に合わない場合はもちろんのこと、45層にある卒業の証を取得せずに脱出した場合は即座に留年が確定する。
罠や魔物の状態異常により行動不能になってしまった場合も同様である。
シゾン達のようにパーティを組んでいるならば、無事なものが回復させれば良い。
しかし、テッドのようにソロの場合は行動不能になった瞬間に留学が決まる。
ある意味で1番実践に近い場に身を置いているテッドにとって、事前の準備が最も大事だと言うのは身に沁みて学んだ事であった。
「最後まで1人でやるつもりか?」
「ええ、最初から掲げた目標ですから。
今更曲げるつもりはありませんよ」
そんなテッドに声をかけたのはマリア先生であった。
マリアは当初はどこかで現実の壁に当たり、パーティを組むなりゴーレムを使うなりにしていくだろうと考えていた。
その兆候は一年生の時の夏休みには出ており、この補講で心が折れて諦める事になるだろう考えていた。
しかし、その予想に反してテッドは腐る事なく地道に一歩ずつ進み、冒険者として最も大事な慎重さを身につけていった。
そして、現在は今までに誰も成し得なかったソロでの卒業という目標を達成する直前まで来ている。
驚嘆すると共に己の未熟さを思い知らされて恥じる思いであったのだ。
「最初の頃はここまで来れるとは思っていなかった。
だが、今は素直に尊敬しているよ。
たとえ結果がどうなろうが今のお前を笑う者はいないだろう。
だが……必ず卒業の資格を手にして帰ってこい」
「言われなくてもそのつもりです。
……3年間、本当にありがとうございました」
「そう言うのは全部終わってからにしろ。
さぁ、お前の順番が来たみたいだ……頑張れよ」
「はい、行ってきます」
こうしてテッドは1人でダンジョンの中へと潜っていき……数時間後には無事に卒業資格を手にして戻ってきたと言う。
自分のことのように喜ぶマリア先生と熱く抱き合うテッド。
その姿をイズは遠くから満足げに見守っていたのであった。