タイムリミット
「どうだった?」
エリーとイズの部屋、ここに戻ってきたイズに声をかけるが、イズは首を振って否定する。
「意図的に辿り着けないようにされていますね。
いまレーアに会うのは無理だと思います」
クレアの事件からイズ達もただ手をこまねいている訳ではなかった。
忙しい中を縫ってレーアのいる最下層を目指そうとするのだが、どれだけ探しても下層に向かうべき階段が見つからない。
何度も繰り返し探索をしているのだが、ダンジョンの管理をしているレーアが拒否する限りは絶対に彼女の元に辿り着くことは出来ないのだ。
そんな中でイズは一通の手紙を入手していた。
そこには3年目の春休み、卒業生のみ待つという文言が書かれていた。
「これってつまり、取り返したいなら自分達で来いって事よね」
「多分そうでしょうね。
だからと言って、今から46層以降を探索させるのは無謀だからこそ卒業生で来いと言っているんだと思います。
そして私たちが手を貸したなら直ぐに道を閉ざすでしょう」
「つまりは正攻法として45階層まで攻略させてから下に送り出すしかないって訳ね」
「卒業して学園を去るまでの時間を考慮すると、卒業試験で試験をパスして、その後、春休みの間に攻略という流れになるでしょう」
「……はぁ、本当に頭が痛い話ね」
クレーズの人格を取り戻す為にはレーアに会う必要があるが、現状で彼女は徹底的に他者と出会う事を拒否している。
レーアに会うにはクレア達のパーティが自力でこのダンジョンの完全制覇をするしかないのだ。
その為にはクレア達に地道に実力をつけてもらうしかない事。
その探索パーティにイズやエリーは入れない事。
探索の期間は卒業試験の日から春休みが終わるまで。
厳しい条件ではあるが、ゴーレムもうまく使いこなせており、現状は順風満帆である。
「僕たちに出来ることはクレアさん達を導く事だけですからね。
とりあえずは出来る事を頑張りましょう」
「やれやれ……何を考えているのかしら、あの女神様は」
「ひょっとして……いえ、まだ分かりませんね。
取り敢えず私達は自分たちが出来る事をしましょう」
こうして2人は相談の結果、レーアの言う通りにするしか方法が無いという結論に辿り着いたのであった。
だが、イズ達は忘れていた……実は唯一レーアの力をモノともせず、偶にあの部屋に遊びに行っては入り浸っている人物がいる事を。