深夜の憂鬱
「その様子だと上手くいったみたいだね。
どんな感じだった?」
上機嫌のメローヌの様子を察したファモがそう尋ねると、メローヌは先ほどのダンジョンでの出来事を語った。
「ふーん、みんなで一緒にか。
なんか私が思ってたのと違ったけど……まぁ、いいか」
経緯と結果はともかくとして、片割れともいうべき存在の機嫌が良くなったのであればと納得したファモ。
こうして相変わらずクレアにベッタリなシゾンなので、何も変わらないようで、それでも少しずつ変わっていく中で、また一つ問題が起こりそうな組があった。
「オヴァーニは何を怒っているのだ」
「別に怒ってないけど。
私なんかと話さずにアドゥラ先生と仲良く話してればいいじゃない」
「いや、絶対に怒っているだろ。
私が先生と話したのが気に入らなくて拗ねているのか?」
「す……拗ねてないでーす!!
もういいから寝るね、おやすみ」
そう言ってオヴァーニはさっさとベッドに潜り込んで目を瞑り始めた。
「あ……」
何か言おうとしたのだが、何も言葉が出てこないデアン。
自分はまだ眠らずに窓の外を眺めながらため息をつく。
(人からどう思われようが目的さえ達成すれば良かった……そういう生き方しかしてこなかった。
目的があるうちはそれで良かったけど、それが無くなったせいか人から嫌われるかもと思う日が来るとはな)
オヴァーニには散々酷いことをしてきた。
それでも彼女は新しく生まれ変わったデアンを受け入れて優しくしてくれた。
そんな日々が続いていつの間にか彼女の存在が重くなっていったのだろう。
だが、長いエルフ生の中でロクに人に深入りせずに生きてきたデアンには、彼女が何故不機嫌になっているのか分からない。
このままの状態がずっと続いて嫌われたらと思うと胸が張り裂けそうになり溜息が止まらなくなっていた。
一方で寝ると宣言したオヴァーニも上手く眠れずに、こっそりと薄めを開けてデアンの様子を伺う。
彼女は窓の外を眺めながら物憂げに溜息を吐いていた。
そんな様子を見ていたオヴァーニは堪りかねたように自分の布団を少しだけ開く。
寝たと思って油断していた為に少し驚くデアン。
そんな彼女に向かってオヴァーニは宣言する。
「今日はここに寝てくれたら許してあげる」
「お、おお。
そのような事で良いのであれば」
オヴァーニの言葉にデアンは喜んでその布団の中に入っていく。
その様子はまるで忠犬のようであり、オヴァーニの心を少し和ませたのだった。