ゴーレムの開発者
その日の探索が終わり、全員がロビーへと戻ってくる。
「どうだったい?
こいつらの性能は」
その日の成果を確かめてから不必要な文を購買へと持っていくと珍しくおばちゃんが声をかけてきた。
その問いに全員が便利で凄いと太鼓判を押すと、購買部の裏から珍しい人物が現れる。
「くっくっくっ……そう言われると開発した自分としても嬉しいねえ」
現れたのはレンジャーの担当をしているハーフエルフのアドゥラであった。
「これはアドゥラ先生が開発されたのですか」
「ああ、基礎の制御魔術を開発したのは父だがね。
そこからクラスの習得や思考による行動の差異などを調整して完成したのがそのゴーレム達だ」
全員が感心したような声をあげるが、その中でデアンだけはアドゥラをじっと見つめ、やがて何かに気づいたかのように手をポンと打った。
「おや、私の顔に何かついているかね?」
「何やら見覚えのある術式が刻まれておるとは思ったが……お主、タギムの娘か?」
「な……父を知っているのか!?」
デアンの言葉にいつも戯けて飄々としているアドゥラには珍しく驚いた表情を見せた。
「あやつは里でも変わり者であったから知らぬ者など……いや、若い世代であれば知らぬか」
その言葉は2人のやりとりを呆然と見ていたオヴァーニへの言葉だったのだろう。
「里の者たちの反対を押し切って人間の娘と結婚しおったが、お主がその娘というわけじゃな。
あやつはいま何を?」
「母さんが死んで暫くしてからフラリとどこかに消えたよ。
今頃何処かでのたれ死んでいるんじゃないかね?」
「あやつがその程度死なない事くらい分かっていよう。
生きておるのであれば何よりよ。
エルフの里の変革……あやつが1番憂慮しておった事がいま為されようとしておる。
何処かで知れば帰ってくることもあろう」
「まぁ、そうだろうね。
父さんは探究心と好奇心を持たないのは損失だ!
って言ってたからね。
鎖国的なエルフの里が解放されたと聞けば飛んで戻ってくるだろうよ」
お互いにはっはっはっと笑い合った後で2人は固い握手を結ぶ。
「アドゥラだ。
よろしく頼む」
「うむ、私の名前はデアン。
よろしく頼むぞ、アドゥラ先生」
「そう言えば君は生徒だったんだな。
父の知り合いなのに生徒とは実に不思議な気分だよ」
「私もタギムの娘に教わる事になるとはな。
刺激のある生活というのも悪くない」
共通の知り合いのおかげで意気投合してしまった2人。
そこからは他の面々を置いてけぼりにしながらゴーレム談義に花を咲かせるのであった。