度を超えたシスコン
「私のお姉ちゃんが可愛過ぎて辛い」
とある日の事、この日はファイターとしての近接戦闘技術の授業を取っていたシゾンは、同じくファイターの授業を取っていたメローヌと模擬戦をしながらそんな事を呟いていた。
「シゾンのクレアさん好きは知っていますけど、最近悪化してませんか?」
「いや、本当に可愛すぎるんだって!
前の時はまだお爺ちゃんっぽいというか、年寄りと接してる感じがあったんだけど、今は人の悪意とかに全く鈍感な天然お姉さんになってるんだよ!?
あんなの……あんなの反則すぎる……」
「クレアさんが魅力溢れる方なのは分かりますけれど……このままじゃ姉離れ出来ませんよ?」
「え……する必要ある?」
「は?……あっ!?」
シゾンのあんまりな返答に、一瞬呆気に取られてしまったメローヌの木剣が弾き飛ばされてしまう。
「私の油断を誘うための冗談とはいえ笑えませんよ」
弾き飛ばされた木剣を拾いながらそう話すメローヌ。
「冗談なんて言ってないよ。
私、一生お姉ちゃんと一緒にいるから」
だが、シゾンが真顔でそう答えた為にどう答えたら良いか分からず、言葉を探している内に訓練の終了を告げる合図がなされた。
「あ、終わったね!
着替えて戻ろうよ!」
「え、ええ、そうですね」
シゾンの言葉に同意して汗を流してから着替えて教室に戻ると、座学組は着替えの時間がない為に既に教室に戻っていた。
そして、教室に入るなりクレアの姿を見つけたシゾンは、
「お姉ちゃーーーん!!」
と、猛ダッシュで椅子に座っているクレアの元へと行き、足元で膝をついた。
そして、そのまま頭をクレアの膝へと埋める。
「あらあら、シゾンってば」
「お姉ちゃん、今日も頑張ったからご褒美!」
「全く……甘えん坊な妹ね」
クレアはそんな事を言いながらも慈愛に満ちた目でシゾンの頭を撫でる。
「えへ……えへへ……うえっへへへ」
クレアの両方の太ももに顔を埋めるようダイブしているので顔は見えないが、聞こえてくる声から相当だらしなく弛緩しているのが分かる。
「あれ、ちょっと重症なのでは?」
「前の時もシゾンに甘かったけど、無制限の甘さじゃなかったからね。
甘さの中に厳しさもあったし。
でも、今のクレアさんって天然ほんわかお姉さんって感じだから無限に甘えたくかるんだよ。
それでいてクレアさんが無限に甘えさせてくれるから……ああなったらもう抜け出せないね」
「確かに抜け出せなさそうな……って、抜け出せない?
まさかあなた……」
「……てへっ」
そう言って舌を出して誤魔化すファモに、メローヌは呆れたようにため息を吐くのであった。