購買部とおばちゃん
本日は3話更新します。
突然叫んだマリアにより高々と持ち上げられるナハト。
「イズ殿!
ナハトちゃんとはこの子の事ですか?」
「ええ、そうですよ。
ダンジョンで出会って私と従魔契約をしたんです。
なので、案内がてら先生達に顔見せしておこうかと」
「ええ、その方が良いでしょう。
イズ殿の頭の上にいる間は安全でしょうが、単独で行動していると抜け出した魔物と間違われる可能性がありますからね」
真剣に話すマリアだが、その目はずっとナハトに固定されている。
「というわけですので、もうそろそろ購買部に行きますので返してもらってもいいですか?」
「コレは失礼……ナハトちゃん、また会いましょう」
「あ、ああ」
まるで壊れ物を扱うように優しく元の位置へとナハトを戻すマリア。
そんなマリアに別れを告げてやや離れた場所にて。
「主人よ、あの御仁は……」
「マリア先生はちっちゃくて可愛らしいものが好きなんですよ。
ナハトは好みのど真ん中でしょうね」
「人は見かけによらないものなのだな」
「ちなみに趣味は裁縫で、時間を聞いていたのは私が所持する服を見たいという話ですね。
服飾の参考にしたいのだとか」
「ほ……本当に見かけによらないのだな」
そんな雑談しながら校舎の入り口を通……らずに右側の方へと歩いていく。
校舎の端まで行き、左に曲がるとすぐに目的の場所が見えてきた。
プレハブ小屋にデカデカと購買部と書かれた看板があり、そこが目的の場所だと察する事が出来る。
「おばちゃーーーーん!!」
「はいはい、聞こえてるよ。
いつも通り裏に回ってちょうだいな」
イズにしては珍しく大声で叫ぶと、小屋の裏から返事が聞こえてくる。
イズが裏に回ると見るからに人の良さそうな恰幅の良いおばちゃんがおり、その横には無数の武具が置かれていた。
「いつも通りに運べるだけ運んじゃいますね」
「ああ、頼んだよ……って、どうしたんだい?
その頭の上に乗っかってるのは」
「我はナハト、主人であるイズ殿と契約した従魔じゃ。
よろしく頼む」
「へぇ、ドラゴンもこれだけ小さいと可愛いもんだね。
あたしゃ購買のおばちゃんだよ」
「本人がそう言っているので呼ぶときはおばちゃんで大丈夫ですよ」
「そ、そうなのだな」
雑談をしながらもイズは黙々と荷車に装備品を乗せていく。
荷車がいっぱいになったのを確認し、落ちないように紐で縛り上げる。
「それではこれで失礼します」
「ああ、ご苦労さん。
偶にはあんたの所の先生が来てもいいんだよ」
「先生は肉体仕事が苦手ですからね。
言うだけは言っておきますよ」
「あんたは体力に自信があるんだろうけどねぇ……偶には休んでもいいんだよ」
「心配ありがとうございます。
ですが、楽しんでやっている事ですから」
「あらやだ、歳をとるとお節介になっていけないね。
今度は茶ぐらい出すからゆっくりしていっておくれ」
「はい……それでは失礼します」
イズはそう言うと荷車の取手を持って運び始める。
来た道を戻り、校舎の端を曲がって購買が見えなくなった時にナハトが口を開いた。
「主人よ。
あの者は自分のことをおばちゃんと言っていたのだが……そのような年齢では無いよな?」