思わぬ苦戦
13階層からは雰囲気が変わって密林のようなダンジョンへと変わっていたが、基本的にやる事は変わらない。
探索を進めて襲いくる魔物を撃退し、下の階へと向かうだけである。
ただ、この階層から明らかに厄介な事が増え始めた。
それは……
「うわあああああ!?」
シゾンが一歩踏み込んだ途端に足元の蔦が絡まり、彼女を逆さ吊りにしながら一気に上へと跳ね上げた。
「シゾン!?
風よ、切り裂いて!!」
クレアは咄嗟に扇からの風の刃を作って絡まる蔦を断ち切る。
「ぐへっ!!
……いててててて、お姉ちゃんありがとう」
受け身を取るも下は木の枝や石で凸凹している道である。
多少のダメージを受けながら何とかシゾンは立ち上がった。
「いま回復してあげるからじっとしてて」
クレアは最近使えるようになった回復魔法でシゾンを癒す。
「それにしてもこれは困りましたね。
この階に入ってから明らかに罠が増えてきてますよ」
辺りを警戒しながらオヴァーニが言うと2人も同意するように頷いた。
「ファモちゃんがいればある程度の罠は防げるんでしょうけど」
「私達はサブでレンジャー取ってない集まりだから罠に対して脆弱だよね」
「今まではそんなに数が多くなかったから困ることも無かったんですけどね。
体感ですがこの階層から罠の数が倍以上に増えてますよ」
「あっちのパーティは順調に探索を進めているんでしょうね」
エルフの中にはレンジャー技能に長けた者もいるのだが、残念ながらオヴァーニとデアンは魔法職一辺倒。
彼女達のチームでレンジャー技能を持っているのはファモだけなのである。
そして、クレアの予想通りにBチームの方はファモのおかげで罠を悉く回避し、更に森の中というレンジャーが最も力を発揮するフィールドで大活躍をしていた。
一方で罠に引っかかっては時間を取られたシゾン達一行の探索は遅々としていた。
誰かしらが罠にかかり、先ほどのように身動き取れなくなったり、状態異常にかかったり、魔物をおびき寄せる罠による戦闘をしたり、戦いが終わった後の治療に特に時間が取られていたのだ。
そうこうする内に撤退のリミット時間が迫ってきてしまう。
結局、シゾン達は下の階層への入り口すら見つけられずにこの日は撤退することになってしまったのだった。