歪んだ女神
女神の加護を受けている……そうイズが告げた瞬間にエリーも心底から嫌だという顔をして天を仰ぐ。
「え、どういう事なんですか?」
「はぁ……この事は他言無用でお願いします。
露見した場合はどんな理由があろうと退学。
冒険者資格は剥奪の上に永久に受理する資格が無くなります」
イズが冗談を言う性格ではない……ましてやこの状況でならば間違いなく本気だと言う事が分かる。
「はい、私はそれで構いません」
「何だか良く分からない話だけど、シゾンがそう言うなら構わないわ」
だが、それでもシゾンは迷わずに頷いた。
クレアも状況が飲み込めていなかったのだが、シゾン達の真剣さを見て頷き、静観することにしたようだ。
「私や先生に加護を与えたのは女神レーアです。
その女神レーアなんですが……このダンジョンの地下奥深くで管理をしています」
「卒業試験で潜るのは45階までだけど、ダンジョンはそれよりも下にずっと続いてるの。
その奥深くにレーアはいるのよ」
「女神様が……ダンジョンに……」
シゾンは昔から英雄の冒険譚が好きであった。
当然勇者エルリックの話も何度も読んでいたし、そこに出てくる女神も知っている。
イズやエリーの話から女神が実在している事も分かっていたのだが、まさかこんなに身近な場所にいたとは思わずに困惑してしまった。
「クレアさんはお爺様に誘われて46階に潜っていったそうです。
探索の途中で落とし穴に落ちて離れ離れになったそうなのですが、それは接触を試みようとして仕掛けた罠でしょう。
「つまり、そこで女神様に出会って加護を与えられた結果、今の状態になっていると言う事ですか?」
「そうなるわね。
言いにくいけど……あの子とても歪んでるのよ」
「先生、言葉はハッキリした方がいいですよ。
歪んでいるのではなく、歪ませたが正解です。
エリー先生、貴方がレーアを歪ませたんですよ」
イズにそう言われたエリーであるが、彼女は素知らぬ顔でソッポを向いた。
「え、どういう事ですか?」
「勇者エルリックが魔大陸の瘴気を祓った褒美として女性になりたいと願い、それを叶えてもらったのがエリー先生だと言うのは知っていますね。
その時に彼女は歪んでしまったんですよ……主に性癖が」
ソッポを向いてもイズの言葉が聞こえているエリーの額からはダラダラと汗がこぼれ出すのであった。