ヤンチャなジジイが2人
「ふぅ、これで何とか終わったのう」
全職員に強化をかけ終わったクレアが一息つく。
「お疲れ様でした。
後は自由に過ごしてくださって結構ですよ。
それと、もうそろそろ……」
イズが何か言いかけた時に空から小さな塊が飛んでくるのが見えた。
「主よ、買ってきたぞ」
「お疲れ様です。
お使いを頼んでしまって申し訳ありません」
「なに、このぐらいの事は造作もないわ」
ナハトから何かの箱を受け取ったイズは中身を確認する。
「これ、良かったらどうぞ。
ムーンホースカフェに無理言って持ち帰り用に作っていただいたパフェです」
「おお、なんと!?
それではありがたく頂戴するとするかのう」
本日は校庭にイベント用のテントが設営されており、教師達の休憩場所となっている。
その場所でニコニコしながらパフェを頬張るクレアの元にナグモがやってきた。
「邪魔するぞ」
「ナグモ殿か。
お主は見回りに行かなくて良いのか?」
「ワシは臨時の講師じゃから特に何かする必要はないそうじゃ。
全く知らん教師と組むというのも性に合わんしな」
「ならばここで茶飲み話でもしに来たのかのう?」
「お主は分かった上で言っておるじゃろう。
臨時とはいえ教師だから下まで行くことが可能でな。
暇じゃったら下の様子でも見に行かぬか?」
「下というと……」
「試験の邪魔は流石に出来んからのう。
行くのはもっと下、46層からじゃがどうじゃ?」
「……バレたらお互い孫に怒られそうじゃのう」
「孫に怒られるのが嫌なら止めておくか?」
「……いや、行こうではないか」
ナグモの誘いに乗ったクレアは2人で連れ立ってダンジョンの裏側へとやってくる。
ここでは教師用のエレベーターがあり、学園の教師を証明するカードがあれば使えるようになっている。
「ここでは中のような制限が無いからお主を連れて下層に行く事が出来るぞ」
「ふむ……45階までのボタンしか無いようじゃが」
「この間調べてみたら隠してあるスイッチを見かけてな。
そこが46階に通じているのだよ」
「見た目は真面目なジジイの割に中身は中々に曲者じゃな」
「真面目なジジイならこんな年齢で行商などやっておらんよ。
それと見た目が少女のジジイに中身のことは言われたくないわ」
「それもそうじゃな」
こうして周りでは試験でバタバタしている中、悪友となった友人2人のヤンチャな探索が始まったのであった。