神の奇跡
クレアが習得している巫女のクラスはプリーストの派生とされている。
その為に神学の授業も挟んでいるのであるが……
「うーむ、やはりダメみたいじゃのう」
芽が出た鉢植えを前にしてクレアは難しい顔で唸っていた。
「条件は全部揃ってるはずなんですけどねぇ」
クレアの横でそう話すのは魔法で操作された人形であった。
この人形はグラーダが遠隔操作しているものであり、彼女が授業を受け持つ時はこのスタイルである。
孤児院と教会の仕事が忙しいのもあるのだが、最大の要因は彼女が学校に来ると青少年の情緒が崩れるという事だった。
本人にそのつもりは無いのだが、無駄に色気を振り撒いているのでしかたない事であろう。
クレアが何を悩んでいるかというと、プリースト系のスキル……要は回復魔法と呼ばれる種類の魔法についてであった。
巫女がプリースト系のクラスであるならば、回復魔法も使えるのではと試してみたのだが一向に上手くいく気配がない。
成功すれば芽はその回復量に応じて成長を遂げるのだが、その兆しは微塵も現れない。
「やはり巫女=プリーストではないんですね。
魔力は申し分なし、信仰心もあるので発動してもおかしくないのですが……」
「治癒の神ドルフ様に祈っても効果が無いとは。
いっその事別の神様に祈ってみるかのう?
例えば勇者エルリックを導いた女神レーア様にでも祈ってみるとしようかのう」
「それで発動すれば苦労は……」
しないと言いかけたグラーダの目の前で鉢植えの芽が急激に成長して大きな花を咲かせてしまった。
「こ、これはどういう事じゃろうか?」
「私もこんな事は初めてなのですが……特定の神から加護を賜ったその他の神からの恩恵を受けられなくなると聞いた事があります。
ひょっとしたらクレアさんにレーア神の加護が?」
「いや、女神の加護なぞ持っておらんはずじゃがのう」
「……理屈は分かりませんがクレアさんがレーア神の力を借りれるのは間違いないようです。
今後はレーア神に祈りを捧げて信仰心を高めていくと良いでしょう」
「力を貸してくれるというのであればありがたいからのう。
今後はレーア神にも感謝を捧げるとするかのう」
こうして回復魔法を使えるようになったクレア。
2年生に向けて更に奥へと進んでいく準備は着々と整いつつあった。