刀の使い方
「なんか妙な視線を感じる気がするのう」
「そう?周りには誰もいないけど」
寮の自室、クレアの言葉を聞いたシゾンは窓を開けて辺りを確認するも特に何も見当たらない。
「気がするだけじゃから気のせいかも知れぬ」
「クラリッサさんが近くにいるとか?」
「それがのう、エメリア嬢からワシに接近禁止命令が出ておるそうなのじゃ。
ワシらが行って会う分には問題ないのじゃが、クラリッサ嬢からワシらへの接触は緊急時以外はダメという事じゃな」
「え、なんでそんな事になってるの?」
「よくは分からぬ話じゃが、プライベートの時間を守ってくれているのかもしれんのう」
「あ、それは確かにありがたいかも」
実際にはクレアの身体に取り憑いた事に対して嫉妬心を覚えた為なのだが、そうとは知らない2人はエメリアの行動を良い方向へと捉えていた。
「それはさておくとして、明日も授業があるから早めに寝ようかのう。
久しぶりにナグモ殿が授業されるようじゃからのう」
ナグモは当初は学園に留まって指示を出すだけのつもりだったのだが、エルフの里という今まで未開であった地の販路を開くのに当人がいなければ話にならないという事で駆り出される事になってしまったのだった。
本当は刀の事を習いたかったのであるが、中々実現はせず、扇の練習がてらにシゾン達の授業を聞いていた情報だけで振るっていたのであった。
シゾンが覚えている型をなぞりつつ、独自に力の入れやすい動きを取り入れた自己流だが、それをしっかりとした動きに直したいと考えていたのだが……
「別にそのままでいいんじゃないか?」
次の日にちゃんと授業に現れたナグモ。
クレアの型を見たナグモは特に驚く様子もなくそう言うのであった。
「いや、自己流なのじゃから何処かしら直す部分があるであろう?
「基本の型をやり込んだ上で、自分が動きやすいように変えていったのだろう?
基本が出来て応用も出来ておるなら教えることは殆ど無いわ。
あとは奥義の書でも読んで覚えると良いわい。
全く……ここまで教え甲斐のない生徒は初めてだわ」
ナグモはぶつぶつと言いながら他の生徒の指導にまわっていった。
「うーむ、釈然とはせぬが免許皆伝という事で良いのじゃろうか?」
クレアは納得のいかぬ面持ちのままで刀のスキルについて書かれた書物を読み込み始めたのであった。