ダンジョンの管理人
「うむ、お疲れ様じゃな」
「早速ですが成果を聞いてもよろしいでしょうか?」
イズに促されるままに全員が其々の成果を発表していく。
クレアとシゾンがゴブリンライダーを倒したと言う話の時には、イズはピクリと反応を見せた。
「ゴブリンライダーが発生していましたか。
ご無事で何よりです」
「一匹で実質二匹分じゃったからな。
面倒な相手じゃったわい」
「お姉ちゃんと私の敵じゃなかったけどね」
「過去に一学期のタイミングでゴブリンライダーが発生したときには、6層に辿り着いたパーティの悉くが探索不能状態に追いやられていましたからね。
それを三体相手にして余裕を持って退治したのは流石としか言いようがありません」
過去、イズがこの学園に来る前の記録になるのだが、その頃はダンジョンの手入れが間に合っておらず変異体の出現が度々報告されていたらしい。
その時の記録でゴブリンライダーが巻き起こした騒動の記録というものが残されていた。
「まぁ、ワシらも6層到達時に彼奴と出会っておったらどうしようもなかったであろうな」
「そういう事にしておきましょうか。
……それにしてもクレアさんの刀は見事な物ですね」
「またまた〜これってイズちゃんがご褒美として置いていったんでしょ?
全員分の装備を出口近くに置くなんて粋な事するんだから」
「いえ、私は購買に持ち込まれた装備品をダンジョンに戻す仕事はしていますが、箱に関してはノータッチですね」
シゾンの言葉にイズは自分の仕業ではないとキッパリ否定する。
イズが嘘をつく人間でないことをクレア達は理解している。
「では、これは全くの偶然というわけかの」
そう結論づけたのだが、イズは首を振る。
「いえ、恐らくですがこのダンジョンの主の仕業でしょうね。
これはあまり広めて欲しくない話ではあるのですが……お手伝いしてくださった皆さんになら大丈夫でしょう。
このダンジョンは管理している主がいるんですよ。
その人がお礼として用意したものだと思いますので安心して使ってください」
「因みにそれはエリー先生では……」
「無いですね。
私も先生もその人の元で管理のお手伝いをしているだけです。
まぁ、恐らく会うことは無いと思いますからこの話は忘れてくれても良いですよ」
「そういう事であれば興味はあるがこれ以上は聞かぬ事にしておこう。
お主達もそれでよいな?」
クレアの問いかけに5人が頷く。
こうして一つの謎を残しつつも初回の見回りは無事に終わったのであった。