ご褒美
突然変異的で現れたゴブリンライダーを倒してからの見回りは実に順調であった。
シゾンが現れた敵の攻撃を阻む盾として、その隙をついてクレアが敵を倒す矛として、2人の連携はまさに完成を迎えたと言ってよい練度になっていた。
順風に進んでいく2人であったが、クレアには気になる点が一つだけあった。
「シゾンよ、大剣は使わなくて良いのか?」
ここに来てからシゾンはずっと片手剣と盾のスタイルで戦っているが、彼女の本来の適性は大剣であるはずだった。
その事が気になっていたのだが……
「うーん、大剣はもういいかなって」
とあっけらかんと言い放った。
「何か心変わりする理由があったんじゃな」
「うん、私はカプス姐さんやメローヌみたいに攻めに回るのは好きじゃないかなって。
それよりも隣にいるお姉ちゃんを守れる戦い方をしたいなって思ったんだ」
そう語るシゾンの瞳には迷いは一切なく本気である事が窺えた。
「本気ならワシは何も言わんよ。
適正外の武器だからと言って扱えない訳ではないからのう」
実際に診断で出てくるのは1番適正のある武器であり、そのほかの武器が全て適性がないかというとそうではない。
ファイターであれば剣や槍、斧など幅広いサブ適性があり、レンジャーであれば弓とナイフはほぼセットというのが基本である。
こうして改めて自身のあり方を見直したシゾンと共に見回りを続けていき、6層のゴールへとたどり着いた時であった。
ポツンと置いてある宝箱……その不自然なまでの置き方に2人は既視感があった。
「なんかお姉ちゃんの巫女装備が出てきた時と同じ感じがするね」
「うむ、あの時と何やら似た感じじゃが……まさかそのようにレア装備がポンポンと出るまいて」
鍵付きの宝箱ではあったが、イズのアドバイスから常に10本以上は携帯するようにしている鍵で宝箱を開く。
中には一本の刀とカイトシールドが入っていた。
刀の鞘には桜の紋様が入っており、クレアが着ている巫女服と合わせて映えるデザインとなっている。
カイトシールドを持ってみたシゾンであったが、まるで自分の身体を測ってから作ったかのようにピッタリとフィットしてきた。
どちらも未鑑定品特有の黒いモヤは無く、直ぐに使える代物であった。
「……これってあからさまだよね」
「まぁ、今回の見回りの報酬という事なのであろうな。
貰っておいて良いものであろう」
こうして最後にご褒美をもらった2人はエレベーターを使って地上へと戻ってきたのであった。