新たな戦闘スタイル
ゴブリンライダー3体と対峙するクレアとシゾン。
通路とはいえやや広めのこの場所では、彼らの機動性は失われず、2人の周囲を縦横無尽に駆け回っていた。
「前衛装備にしておいて正解じゃったのう」
「そうは言っても防具はそのままなんだから気を付けてよね」
いつ仕掛けられても対応出来るように背中合わせでゴブリンライダーの様子を窺う。
ゴブリンライダー達の内、一体は弓とナイフ持ちのレンジャータイプ。
残りの2人が片手剣と片手斧に鎧を着たファイタータイプであった。
ファイタータイプのゴブリン二匹が意を決して2人に向かってくる。
ウルフのスピードを活かした一撃を繰り出してくるゴブリン。
シゾンは片手斧の一撃をバックラーで防ぎ、クレアは片手剣の一撃を軌道をずらすように刀で受け流す。
その瞬間を狙って後方にいたレンジャータイプのゴブリンの弓がクレアへと放たれた。
「お姉ちゃん!?」
その矢はクレアに突き刺さるかのように思われたのだが、クレアは左手を素早く懐に入れ、そこから鉄扇を取り出して受け止めた。
「案外このスタイルも悪くないかもしれぬのう」
クレアが鉄扇を振るうと、突き刺さった矢が反転してレンジャーゴブリンに向かって猛スピードで動き出した。
まさか自分の矢が返ってくるなどと思っていなかったレンジャーゴブリンは反応が遅れ、その額に矢を突き刺されて絶命する。
「……今何やったの?」
「扇で風の力場を操作してチョチョイとのう。
ほれ、まだ敵は残っておるから油断するでないぞ」
クレアに促されて2体のゴブリンライダーに意識を向ける。
彼らは仲間が倒された事で僅かばかり動揺しているようであった。
更に騎乗して指示する相手がいなくなったウルフはこの場から一目散に逃げていく。
再びタイミングを合わせて2人に襲いかかる……と、見せかけてシゾンに狙いを定めた二体。
同時に遅いくる一撃を片方は剣で、もう片方は盾で受け止める。
ガラ空きになった胴体に二頭のウルフの噛みつきが……
「させぬと言うておろうが」
先程のように片方のウルフの牙を切り落とし、もう一匹のウルフの胴には閉じた鉄扇の先端を押し当てた。
「吹き飛ぶがよい」
鉄扇の先端から放たれた暴風はウルフの身体を上に乗っていたゴブリンごと叩きつける。
その事態に動揺して僅かばかりの隙を見せたゴブリンライダー。
「いい加減イラッとしてるんだからね!」
シゾンはバックラーを裏拳気味にゴブリンへと叩きつけて吹き飛ばす。
そしてガラ空きになったウルフの背中に剣を突き立てた。
残ったのは吹き飛ばされてダウンしたゴブリン二匹とウルフ一匹。
勝負は既に終わったも同然であった。