お手伝い開始
全員が12階層まで到達した翌週からお手伝いが始まった。
「現状、皆さん以外のパーティは7〜10階層を攻略中です。
この辺りの救助は僕がやりますので、皆さんにやってほしいのはその上の階層で魔物が増えすぎないように適当に掃除して欲しい事です。
簡単にいうと今まで通りにフロアを回って魔物を倒してください」
イズの説明を受ける6人は首を捻る。
「それっていつもやってる事だけどそんな事でいいの?」
「ええ、問題ありません。
魔物は倒すとマナになってダンジョンに吸収され、新たな魔物へと生まれ変わります。
これは人体で言う所の血液循環だと思ってくれれば良いです。
適度に間引きして循環させなければ不都合が起きる可能性があるんですよ」
「ふむ……生き残って強力になっていったりとかだろうな。
それによってスタンピードが起こる可能性もありそうだな」
イズの簡単な説明で全てを理解したのか、デアンが補足を入れる。
流石にこのメンバーの中で最年長なだけあって知識はかなり豊富。
それでいてエルフの里の司祭をやれる程に頭の回転が早いだけはあると言えよう。
「それではよろしくお願いします。
私は下の方を中心に掃除してきますので。
何かあれば学生証から連絡をお願いします」
こうして6人は2人ずつに分かれてダンジョン清掃という名の間引きを開始する。
自分たちのレベルよりも遥かに下という事で、今回はいつも通りの2人組……クレアとシゾン、ファモとメローヌ、オヴァーニとデアンでチームを組んでいく事になった。
最も戦力の高いクレア達が5、6階。
バランスの取れたヨーデル姉妹が3、4階。
後衛同士でバランスの悪いエルフ組は1、2階である。
早速5階に降りて歩き出したクレア達だがシゾンの鼻息が荒い事に気付いた。
「そんな調子ではすぐに疲れてしまうぞ。
低レベルな魔物しかおらぬのじゃから気楽にやるといいわい」
「でも、この間はそんな風に油断してたからやられちゃったんだよ?」
「油断しない事と力み過ぎはまた別物よ。
それにシゾンが力を抜きすぎてもワシがカバーするから大丈夫じゃ。
パーティを組み始めたばかりのデアンではその辺りの機微がまだ分からなかったであろうがな」
「……それもそっか。
確かにこんなに力んでたらすぐに疲れて最後まで持たないよね」
「何事も自然体が大事という事じゃ。
さて、先に進むとするかのう」
こうして2人は魔物以外の気配がしないダンジョンを進んでいくのであった。