エリーの頼み事
「進行が早すぎる?」
11月が始まった日の放課後、エリーに呼び出されたクレアは保健室で彼女の話を聞いていた。
彼女の話とはズバリそのままにクレア達のダンジョン進行度が早すぎるという話であった。
「ええ、師匠とシゾンちゃんだけならこの結果も驚かなかったんだけど。
師匠と仲良くしているヨーデル姉妹。
それに編入で入って来たエルフの二人組も含めて早すぎるのよ。
一年目は12階層を目標にしているんだけど、もうそこまでいきそうでしょ?」
「うむ、間もなくそこまで行くじゃろうな」
現在のクレア達の記録は11階層。
エルフ組は10階層まで到達しているのだが、編入して二ヶ月でここまで到達したことは驚異的なスピードだと言える。
「そこから先は封印がかかっていて進級しない限りは進めない仕様になっているの。
だからそこまで急ぐ必要は無いわよ」
「別に無理をしているわけでは無いんじゃがのう。
安全マージンはしっかりと確保して余裕を持って進めておるのじゃ」
「はぁ、師匠のことだからそうなんでしょうね。
それならお願いがあるんだけど、12階層まで到達した後はイズちゃんの見回りを手伝ってあげてくれないかしら?
正直、あの子一人でダンジョンの見回りから救援までこなしているのはオーバーワークなのよね」
去年まではイズとエリーの二人で見回りをこなしていたのだが、今年からエリーが教室を担当する事になり、保健室との兼任で動けなくなってしまっていた。
イズは平気だからと一人で仕事をこなしていたのだが、横から見ていて仕事量の多さが気になっていたのだ。
そこで、クレア達が12階層まで到達した後は一年生のラインを彼女達に任せたらどうかと考えたわけであった。
事前にイズに打診したところ、最初は渋っていたのだが、クレアにはかなりの信頼感があるらしく、彼女の名前を出す事で了承してもらった。
「なるほどのう……イズちゃんにそこまで信頼してもらえたならやってみるとするかのう」
「エルフの里行きはとっても楽しかったみたいね。
ほ〜んと、羨ましかったわ」
「お主らはダンジョンの管理がある以上はどちらかが残らなければならんからのう。
まぁ、ワシが卒業した時には暫くここの面倒を見てやっても良いぞ。
その時は2人で旅行でも何でも好きに過ごすと良い」
「ふふ、それはありがたい申し出ね。
それじゃ、到達したらでいいけど、見回りの件お願いね」
「うむ、よかろう」
こうして、この一ヶ月後……冬休みが間近に迫ってきた日に6人全員が一年生のゴールに到達し、イズの手伝いで見回りをする事になったのであった。