チーム結成
「ふむ……何やら複雑な話があるようじゃな。
しかし……」
クレアがふと辺りを見渡すと、同じように時間制限で退出してきた学生達の視線が一斉にこちらに集まっていた。
「戦利品の話はまた後日って事にして。
とりあえず今は場所を移して話を聞こうよ」
ファモに促された一行はとりあえず部屋に荷物を置き、身綺麗にしてから学食で集まろうという事で落ち着いた。
クレアと共に自室への道を歩くシゾンはずっと俯いていた。
「お姉ちゃん、私……」
「言いたい事があるのは分かる。
しかし、後で話し合う事になっておるのじゃから一先ずは身体を綺麗にして皆と集まってからじゃな」
「……うん」
部屋に着いた二人は装備を外してシャワーを浴び、制服に着替える。
身体が綺麗になった事で少し落ち着いたのか、シゾンの表情は少し柔らかいものへと変わっていた。
「少しは落ち着いたみたいじゃのう」
「うん……ダンジョンの中で頭が冷えたと思ってたけど全然冷静じゃなかったみたい」
「あの空間自体が非日常じゃからな。
何のトラブルがあったかはまだ聞かん。
じゃが、その中で立ち直ったと思ってもそれは勘違いの場合が多く次なるトラブルを招きかねん。
特にシゾンのように経験の浅い者はな」
「結構学んできたと思ったんだけどね」
「この期間でそれが学べるならば3年間も通う必要は無かろう。
その失敗も含めてこれから学んでいけば良い話じゃよ」
「……これらからも頼りにしていい?」
「勿論じゃよ」
こうして完全に元の調子を取り戻したシゾン。
学食後で合流後は、
「みんな、本当に心配かけてごめん!」
と全員に頭を下げることから始めた。
その後、デアンの話は全部が逆で自分が毒を受けて昏倒して守られていたこと。
そのせいで一階層も突破できなかった事を報告した。
「要らぬ世話だったみたいだな」
シゾンの様子にデアンが安堵したように呟く。
「元はお主が変に庇ったのも原因じゃからな。
ワシらはこれから一つのチームを組むのじゃ。
変な嘘や誤魔化しは無しじゃぞ」
「歳をとると余計なお節介を焼いてしまうものだな。
肝に銘じておくとしよう」
「それと変に自分を卑下したりも無しだからね。
デアンはもう私達の大事な仲間なんだから」
すっかり調子を取り戻したシゾンがそう言うとデアンはやや驚いた顔を見せる。
だが、直ぐに笑顔になると、
「それも肝に銘じておこう。
これからもよろしく頼む」
と頭を下げた。
こうして一つのチームを組んだ6人……ここから結束を固めた彼女達のダンジョン攻略は快進撃を見せる事になるのだった。