誓い
「ん……」
意識を取り戻し少しずつ目を開くシゾン。
そんな彼女が最初に見たのは誰かの背中であった。
(お爺ちゃん?)
混濁する意識と不明瞭な視界から、その背中は祖父のものかと思ったのだが……
(おじいちゃん……お姉ちゃん……)
ぼんやりとした思考は断片的な単語しか浮かばず、祖父の後に繋がる言葉は姉であった。
(そうだ……お爺ちゃんはお姉ちゃんになったから……あれ、今何してたんだっけ……)
目の前の霧が少しずつ晴れるかのように、思考がまとまり始めてくる。
そうして思考がクリアになってようやく、目の前の背中が誰のものであったかハッキリと思い出した。
「……デアン!?」
完全に意識の覚醒したシゾンは慌てて立ち上がる。
そこにはシゾンを庇うように前に立ち、コボルトとゴブリンの編成群と闘うデアンの姿があった。
コボルトが繰り出した片手剣の一撃を杖で受け止めるデアン。
しかし、その直後に端から近寄ってきたゴブリンのナイフが彼女の脇腹を切り裂いた。
「ぐぅ……ヒール!」
即座に回復魔法を発動して傷を癒すデアン。
更にゴブリンに蹴りを入れて体制を崩し、コボルトの剣を跳ね上げて出来たガラ空きのボディに杖の一撃を喰らわせる。
「ごめん、今手を貸すね!」
そこにようやく事態を把握したシゾンが合流し、先ずは吹き飛ばされたゴブリンに大剣をぶん投げてトドメを刺す。
更に杖の一撃で数歩後ろに下がったコボルトに向かってダッシュすると、その腹に向かって勢いの乗った蹴りをお見舞いした。
シゾンの巨体から繰り出される一撃はデアンの杖の一撃よりも大きかったらしく、コボルトの姿はその一撃でかき消える。
「助かったよ、ありがとう」
残党がいないことを確認したデアンはシゾンの方へと向き直ってお礼を言う。
「そ、そんなの私の方がお礼を言うべきだよ……守ってくれてありがとう。
それとごめんなさい……私、完全に油断して焦ってた」
「シゾンはまだまだ若いから仕方ないだろう。
こういう経験を経て一人前になっていくのだからな」
「確かにデアンやお姉ちゃんに比べたら赤ちゃんみたいなものかもしれない……でも、それを言い訳にしてしょうがなかったってしたくない。
私は今日の失敗を絶対に繰り返さない……本当にごめんなさい」
「シゾンはきっと良い大人になれるさ。
……私と違ってな」
デアンはそう言ってシゾンの肩をポンと叩くと先の方へと進んでいった。
シゾンはその言葉の重みを考えながらその後ろをついていくのであった。