就寝
5-3です。
「まてまて……女神の祝福はその名のとおりにあらゆる能力を底上げして耐性を与えるバフに当たるスキルであろう?
なぜデバフ扱いになっておるのじゃ!?」
「それは私が願って変化した、対象の性別を変化させる……この部分が大きいのだと思うの。
身体の能力を上げる効果と身体そのものを変化させる効果。
これを総合した結果、女神の祝福はややデバフと捉えられたみたいね」
「でも、女神が直接与えた訳ではなく、呪い返しによって与えられたスキルなので中途半端にかかってしまったんです。
その結果、私は身長や容姿、骨格は女性の身体になりつつも、モノは付いたままという身体になってしまったんですね」
かつての自分の姿を思い浮かべているのだろうか?
イズは少し寂しそうな瞳をしながら語っていた。
「それは……何といえば良いか……」
「さっきも言いましたが、これは私が悪いんです。
そして、こんな姿になりはしましたが、今の生活にはとても満足しています。
だから慰めの言葉は要りませんよ」
「主人殿……それで、その後は……」
「イズちゃーん、もう過去の話はいいでしょ。
それより、ね!」
突然、エリーがイズを後ろから抱きしめて耳元で囁く。
「はぁ……仕方ありませんね。
先生が既に我慢の限界らしいので私たちは部屋で寝てきます。
ナハトも私達の部屋以外でしたら好きに過ごしてもらっていいですよ」
イズはそう言うと膝の上にいたナハトを目の前のテーブルに下ろしてから立ち上がる。
「先生……その状態だけ動きづらいんですけど」
「じゃあ、しっかりエスコートしてちょうだい」
エリーはそう言うとイズの首に手を回したままジャンプしてソファーを飛び越える。
イズも慣れたもので、跳躍してきたエリーの下半身を受け止めると、お姫様抱っこの格好で持ち上げた。
「それではナハト……おやすみなさい」
「あ、ああ……主人殿。
その……ご武運を」
寝室に向かって就寝するだけのはず……それだけの筈である。
しかし、イズの瞳はこれから戦いに赴く戦士のようであった。
「ええ、ありがとうございます」
「イズちゃん、はやくはやく〜」
待ちきれないと言わんばかりに足をバタバタ動かすエリー。
その行動に急かされるようにイズは寝室へと向かっていく。
何故かナハトはその背中を案じて見送る事しか出来なかったという。