油断
2組が上手く機能している中でいちばんの問題だったのがシゾンとデアンであった。
「デアンさんってプリースト適正だったんだね」
「まぁ……神木を崇め奉っていたから自ずとそうなったのだろうな」
「あ……そう言えば……って、昔のことは言わないの!」
「ああ、すまぬな。
私の正体がバレてしまったら迷惑をかけてしまうからな」
「そういう事じゃなくて……って、こんな時にゴブリンが大群できちゃうの!?」
シゾンが何かを伝えようとした時、通路の向こうからゴブリンの群がこちらにやってくるのが見えた。
「何の話か分からぬがとりあえずはあの群れを片付けてからだな」
「ああ、もう!!
容赦しないからね」
話の腰を折られた形になったシゾンは大剣を持ってゴブリンの群れを薙ぎ倒していく。
(早く倒して伝えなくちゃ!)
未だ自分を卑下するデアンにそんなことをする必要はないと伝えたい。
シゾンの中にそんな思いがあったせいか、動きが粗雑になっていた。
相方がクレアであればそんな変化に気付いて忠告していただろう。
しかし、今日初めてパーティを組んだデアンにはそのような小さな違いなど分かりはしなかった。
その結果……
「よし、これでぜん…‥えっ!?」
目の前に飛び込んできた最後のゴブリンを剣で切り払い安堵する……が、その背中に隠れていたもう一匹のゴブリンが飛び出してきた。
ゴブリンは手に持っていたナイフをシゾンの顔目掛けて振り下ろす。
咄嗟に首を捻って回避するが、頬を掠めて鮮血が散る。
「でやああああ!!」
咄嗟に大剣を手放したシゾンはまだ宙にいるゴブリンの身体を掴み、咆哮と共にそのまま地面へと叩きつけた。
「大丈夫か?」
「あはは、油断しちゃった。
全然だいじょう……!?」
その言葉の途中でシゾンの視界がグラリと揺れる。
(これ……毒?あ、これ、まず……)
そう考える途中でシゾンの意識が切れるように落ちていき、その巨体がバランスを崩す。
デアンが慌てて受け止め、肩で支えて通路の脇へと移動した。
「まさか習ったばかりでこんな魔法を使うなんて思わなかったわ」
デアンは今週受けた授業を思いだす。
状態異常の脅威と対処法という名の授業はその名の通りの内容であった。
そして、冒険の途中で最も多く、かつ危険な状態異常である毒については特に注視させられる内容で、その対処法である魔法も真っ先に覚えさせられたのである。
こうして、倒れたシゾンに治療を施し、目覚めるまで彼女の身柄を防衛する事になるのであった。