再びムーンホースカフェ
「すいません、仕事を手伝ってもらって。
こちらは問題なく片付きましたので」
「すまん、取り乱してしまったがもう大丈夫だ」
待機列がようやく収まった頃合いでエメリアとデアンが裏から戻ってくる。
デアンの服が新しくなっているような気がするが、気にしては駄目なのだろう。
「いやいや、普段からこのように忙しい仕事をしておるとは頭が下がる思いじゃったよ」
「あれ、そんなに忙しかっ……ああ、なるほど。
クエストボードに依頼が一つも残ってないレベルで忙しかったのですか」
以前にも似たような事があった為に全てを察したエメリア。
クレア達は断ったのだが、彼女は労働には正当な対価が支払われるべきだと主張した結果、小遣い程度の賃金が支払われた。
「これはムーンホースカフェの支払いにでも使うとするかのう」
「さんせ〜い!
結構遅くなっちゃったし、もうそろそろ行こうよ」
という事で一行は最後にムーンホースカフェへとやってくる。
相変わらずの行列であるが、彼女達は以前許可が出た裏口から尋ねる。
「お邪魔するのじゃ」
「お、久しぶり……なんかデカくなったか?
やっぱ成長期だからか」
「いや、幾ら何でも以上でしょ。
それともエルフってそういう生態だったりするの?」
迎えてくれたのはカフェの店主と、クレア達が仕事をした時に導いてくれたスイップであった。
「夏休みの間で色々あってのう」
「わーお、一夏の危ない経験でもしちゃって大人の階段登っちゃった的な!?」
「そうかもしれんのう。
さて、前の席を使わせてもらっても良いかのう?
2人追加しとるんじゃが」
「ああ、あんた達ならどれだけ使ってもらっても構わねえぞ。
それじゃ、ごゆっくり」
店主はそう言うとデザートの作成作業へと戻っていった。
「それじゃ案内するわね」
クレア達だけでも席に行く事は可能だったのだが、スイップが案内をしてくれたので素直に従う事にした。
「ここではどのような物が食べられるのでしょうね」
「ま、まぁ、期待してやっても良いのではないか?」
外界の食べ物の美味しさにすっかりハマったオヴァーニと、カリーの美味しさで食べ物への関心が向き始めたデアン。
2人もややソワソワしながらついていくのであった。