カリー屋ふたたび
暫くは歩いて街に着いた6人は早速話題となっている店へと向かったのだが……
「凄い行列じゃのう」
「これ並ぶの辛そうだね」
話題の店のランチ時という事もあり、店の前には長蛇の列が出来ていた。
「とりあえずお店だけでも見てみませんか?」
「どんな料理出してるか興味あるからね」
というヨーデル姉妹の言葉によって、とりあえずお店の方を見てみる事にした6人は移動を始めた。
「ふむ……何やら芳しい匂いがしてきたな」
「これは食欲をそそられますわね」
「やっぱり並んででも食べてみようよ」
と、漂ってきた匂いにデアンとヨーデル姉妹が反応を示す。
「あれ……この香りって……」
「独特の香りは間違いようがない気がするのう」
「これってカリーの香りでは?
この街にもカリーはあったんですね!」
その独特の香りにクレアとシゾンはすぐに思い当たり、オヴァーニも躊躇う事なく正解を口にする。
そう、3人が嗅いだ事のあるこの匂いは正にカリーの香りであった。
「そう言えば……」
「あ、お館様とお嬢様じゃないですか!
いらっしゃってくださったんですね」
何か思い当たることがあったシゾンが言葉を発しようとした時であった。
建物の方からイリスが現れて近寄ってくる。
「誰かと思えばイリスではないか。
こんな所でなにをやっておるのじゃ?」
「何をって……ナイリさんのお店がオープンしたから手伝っているんですよ。
私とカプスの姐さんはこの後エルフの里のギルドに行く予定ですからね。
その前にこのカリーの味を覚えていこうって事で、従業員が揃うまではお手伝いしてるです」
「ああ、ここってナイリさんのお店だったんだ。
新しくオープン出来て良かったね」
「正確にはアンデルスト家のお店なんですけどね。
ここを建てるための費用が全部お屋敷のお金で賄ってるんですよ、ここ。
だからナイルさんは雇われ店長って立場ですね」
「そんな話じゃったかのう……忘れてしもうとったわ」
「私も何か聞いた気はするけど学校の準備でそれどころじゃなかったから」
一生懸命説明するイリスであったが、何故かクレアは全くピンと来ていない。
ついでにシゾンも聞き流していたようで全く覚えがないようである。
「まぁ、お館様はそれどころじゃなかったですからね。
一応ナイルさんはお金が貯まり次第ここを買い取る予定ですが、それまではお館様がここのオーナーです。
……つまり、並ぶ必要はないのでVIP室へ案内しますね」