夏休みデビュー
夏休みが明けた登校日、久しぶりに制服に袖を通したクレア達。
「制服が着用者に合わせて大きさの変わるマジックアイテムで助かったわい」
「急に大きくなっちゃったもんね。
あ、髪の毛結んであげるからこっちに来て」
「ワシはこのままでいいんじゃが……」
「ダメ!
ちゃんと可愛くしなくちゃ」
そういうシゾンによって無理やりにポニーテールにされたクレア。
最初は渋々であったのだが……
「これは首元が涼しくて良いのう」
と新しい髪型にご満悦の様子であった。
「さて、折角じゃから迎えに行くかのう」
「案外心細くしてるかもしれないからね」
と2人で話し合ってから女子寮の方へと向かう。
途中、2人の姿を見た生徒達が明らかにざわついているのだが気にせずに目的の場所へと辿り着いた。
クレアとシゾンが並んだ部屋の扉をそれぞれノックする。
軽い返事が聞こえた後に扉が開き、現れたのはエルリック学園の制服に身を包んだオヴァーニとマタンであった。
「おお、よく似合っておるではないか」
「マ……デアンもよく似合ってるね」
マタンはエルフの里の中の話であるが死んだ事になっている。
今後エルフとの交流も増える中でその名前を名乗り続けるのは良くないだろうとの話し合いの末、彼女の新たな名前はデアンとなった。
元の名前と似ているのは呼ばれた時に反応出来なかった事を防ぐため。
そしてマタンと呼ばれて反応してしまった時も名前が似ていたからという理由で誤魔化せるためであった。
こうして新たに編入する事になったエルフ2人を連れて教室まで向かう4人であったが、周りのざわめきは更に大きくなっているように感じた。
一体何事だろうかと辺りの様子を探ろうとした時である。
「やっほ〜久しぶり!」
「夏休みの間はお世話になりましたわ。
変わらずに元気そうです何よりです」
やってきたのはファモとメローヌのヨーデル姉妹であった。
「おお、久しぶりじゃのう」
「あ、久しぶり〜!
ねぇねぇ、皆んなが騒がしいけど何かあったの?」
クレアは挨拶を返し、シゾンもそれに倣いながら質問をする。
その言葉にヨーデル姉妹は顔を見合わせた後で呆れたような表情を見せた。
「あのさぁ……夏休み明けたらクレアちゃんは急成長して、更にエルフの美人さんと可愛い子を連れて歩いてるんだよ。
話題にならないほうが無理でしょ」
「余りにもインパクトがありますからね。
夏休み明けにイメージが変わる夏休みデビューというものがあるそうですが……正直、誰よりもデビューしてらっしゃいますわね」
自分たちがどれだけ話題の中心にあるのか。
全く無自覚な一行に諭すように姉妹は語るのであった。