変貌した里
神木が若木へと変えられて三ヶ月が経った頃であった。
エルフの里には少しずつ変化が見られていた。
最初の変化として、エルフの里の中に冒険者ギルドが建てられたのであった。
そこで働くのはカプスとイリスのコンビを始めとして、アンデルスト家で雇用されていた冒険者達である。
「カプスさーん、これお代わり!」
「イリスちゃん、教えてもらった料理で家族が喜んでくれたわ。
本当にありがとうね」
冒険者ギルドに併設された食堂で働く2人の元には様々なエルフがやってきていた。
食堂は連日大盛況であり、毎日長蛇の列が並んでいた。
エルフ達は里に閉じこもっていたせいか、食生活というものが全く発展していなかった。
そこにアンデルスト家で給餌を含む様々な事を学んだ使用人達がやってきて料理とサービスを提供しているのだ……有名にならないわけが無い。
「エアルさん、本当に頼りになるわね」
「今日も頼もしかったですぅ」
「え、あ、そうですかね?
自分で良ければ何処にでも行くのでいつでも声をかけてください!」
顔面偏差値の高いエルフ達。
美女2人にベタベタとくっつかれながら褒められたエアルはデレデレとした顔で彼女達に答える。
冒険者ギルドが出来たことで仕事が増え、森周辺の魔物討伐や素材の納品でお金を得る事が出来るようになったエルフ達。
しかし、エルフ達の特性から前衛は殆ど居らずに後衛寄りのレンジャーやソーサラー適性のある者が殆どあった。
エルフ達が強敵を相手にする場合は遠距離から一斉にして不意をつくしか無かったわけであるが、ギルドが出来てアタッカーの冒険者が来て状況は変わった。
彼らが強敵を抑えている間に好きなだけ攻撃する事が出来るようになったのである。
また、攻撃を浴びせても逃げられたらどうしようもなかった今までと違い、逃げようとする敵をアタッカーが足止めするので狩りの成功率は格段に上がった。
その為にエアルのような守りに特化した冒険者は引っ張りだことなり、この場所で冒険者登録をした女エルフ達からはモテモテとなっていたのであった。
「は、見ていて情けなくなるくらいにデレデレしちゃって。
あの2人が何歳か知ってるんですかね?」
「まぁまぁ、あの人達だって本気でエアルに手出そうって訳じゃないだろ。
寿命の問題を考えると尚更ね。
それでも本気だって言うなら好きにやらせればいいさね」
「すいませーん!阿良田商会です!!
積み荷を持ってきました」
調理場からエアルを眺めていた2人がそんな事を話していると入り口から声がかかる。
2人がそちらに向かうと、大量の積み荷をイズ達と同じ黒髪の青年達が下ろしにかかっていた。
「いつもご苦労様です」
「暫くは皆様が滞在されると言う事ですね」
「ええ、前に積み荷を護衛していた者たちがこちらの特産を仕入れて帰還する予定です。
暫くは面倒をおかけしますがよろしくお願いします」
「いえいえ、私たちも腕によりをかけてお持てなししますので是非英気を養ってください」
やってきた青年達にアンデルスト家の従者の顔で対応する2人。
三ヶ月で大きく変わったエルフの里……その変貌には様々な思惑が絡んでいた。