滅びを告げる
「待ってください!」
「里を滅ぼすなんて!?」
クラリッサの言葉に驚いて声を上げたのはカプスとイリスであった。
彼女達はエメリアと面識はあるのだが、クラリッサ……見えないギルドマスターに会えたことは無かった。
その為、彼女達はクラリッサという人物が全く掴めずに最悪の想像にまで至ってしまったのだ。
一方でシゾンはクレアに付きっきりとなり、それどころではない。
ナグモはイズが静観している為に成り行きを見守り、キンハーとオヴァーニはそれも仕方ないという思いで状況を見つめていた。
「い……一体何を……」
マタンは荒く息を吐きながらクラリッサに聞き返す。
自分が聞き間違えたのではないかと信じて。
「里を滅ぼすって言ったのよ。
この通りにね」
だが、現実は甘くは無かった。
聞こえた通りの答えが返ってくると同時にクラリッサは神木へと手を伸ばす。
クレアの舞によって輝いていた神木の光がどんどんと弱くなっていき、生い茂った葉が徐々に枯れていく。
こうしてクレアがやってくる前と同じ姿に戻った神木。
「ここまでは恩を仇で返したから当然だとして……やっぱり迷惑料って払うべきだと思うのよね」
クラリッサがそう言って力を強める。
みるみる内に萎んだように小さくなっていく神木。
まるで神木の時間を巻き戻しているように縮んでいき……最後にはそこに若木があるだけであった。
「迷惑料は迷惑を受けた人に返さないと駄目よね」
クラリッサは神木から集めたエナジーをクレアへと注ぎ込む。
「う……むぅ……」
「お姉ちゃん、大丈夫なの!?」
気絶したクレアの目が開き、シゾンが声をかけ。
「後は私からのサービスもつけてあげるわ。
そのままじゃ大変でしょうから」
クラリッサは更にクレアへとエナジーを注いでいく。
すると、先ほどの神木とは逆にクレアの身体がどんどんと成長していった。
今までは見た目年齢層8歳くらいのクレアだったのだが、エナジーによって身体が急速に伸びた結果、今では13〜14才程度の見た目へと成長していた。
「そんな……神木が……」
僅か1メートルほどの小さな若木となった神木には先ほどのような力は一切感じない。
動くことが出来ないマタンは、そうなっていく様子を見つめる事しかで出来なかった。
「このまま放っておいても良いのだけど……元は私が原因だから見捨てるのも寝覚めが悪いわ。
だから貴女達に最後のチャンスをあげる」
いまだに呆然とするマタンを見下しながらクラリッサは話を続けるのであった。