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純粋な力

神木を盾にされた事でマタンの攻撃が止まる。


その隙を突いてか、今までだらんとして糸の切れた人形のようになっていたクレアの目が開かれ、瞳に力が戻る。


「全く……中から動かすのと違って外から動かすのは中々大変なんだから勘弁してよね」


ぱんぱんと身体を叩いて埃を払うクレア。


「さて、改めまして挨拶をさせてもらおうかしら……紛い物さん」


「何だと!私の何が紛い物だと……」


「ハイエルフに憧れてなりたくて私の力を奪おうとしたんでしょ。

でも、所詮紛い物ではどれだけ力を手に入れた所で変わる事はないわよ。

何なら優秀な鑑定人を連れてきてもいいけど」


クレアの言葉通り、彼女が意識を失っていた理由は体力の大半を吸われたからであった。


エナジードレインは生命力……分かりやすく言うと体力と魔力を同時に吸収する技である。


その力で吸われた魔力はクレア自身が持つ量からすれば微々たるものでしか無い。


その微々たる量で自分が遥かに強くなったと思えるくらいに、エルフとハイエルフの魔力には差が開いていたのである。


「そんな訳がない!

私は巫女様の力を吸ってつよ……」


「これを見てもそう言えるのかしら?」


クレアの身体から目に見える程の濃い魔力が溢れ出す。


それは黒くて濃ゆい霧となってクレアの両手を包み込んだ。


それと同時に浮かんでいたクレアが地面へと降り立った。


「貴女にはこれくらいで十分でしょ。

来なさい」


格闘家のように構え、人差し指をクイクイと動かして挑発する。


「ふざけた真似を!」


先程と同じように魔力の塊を作って連続で放つマタン。


だが、クレアは黒い霧を覆った腕でその攻撃の全てを弾き返していく。


あらぬ方向に弾き返された魔力の塊は、着弾と同時に爆発して神殿を大きく揺らした。


「ば……馬鹿な……」


「そんな子供騙しが通用すると思ってるの?

私はさっき言ったはずよ……来なさいと。

貴女の全力をぶつけてきなさい」


「その余裕いつまで持つかしらね!」


マタンは集中して魔力を高めていく。


己が元から持っていた力、クレアから奪った力……その全てを一つの魔法へと練り上げる。


クレアはそんなマタンを楽しそうに見ていた。


その余裕がマタンの癪に触り、自分でも無謀だと思うほどに根こそぎの魔力を込めていった。


「後悔しなさい、エルヴン・スパーク!!」


マタンの前に魔法陣が現れ、そこから極太のレーザーがクレアめがけて発射される。


属性など何もない、ただの強大な魔力による純粋な力。


そんな純度100%暴力レーザーを前にしたクレアは……黒い霧に覆われた両手を前に出して直接受け止めに行ったのであった。

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