歓迎
「報告します!
巫女様を乗せた馬車が間もなくこの地へと到着されるようです」
エルフの里、神木の前に建てられた神殿。
その中で部下から報告を受け取っていたエルフがいた。
「分かりました。
巫女様に失礼がないようにお願いしますね」
「はっ!」
部下に指示を出して満足気に頷く女性。
彼女こそエルフの里の長であり、この神木を見守り続けた者……名をマタンという。
「ようやく……ようやく私の悲願が叶う時が来ましたか。
神木様、長い間お待たせしました。
貴方に頂いたモノをようやっと私の手で返せる日が来るようです」
神木に向かって深々と五体投地をしながら、マタンはそう語りかけるのであった。
ところ変わってエルフの里の入り口。
御者台にはキンハーとオヴァーニが座って運転をしていた。
「里に行くには隠された道を見分けんとあかん。
それが出来るのはエルフ……と、イズはんの鑑定眼だけやろな」
「流石に常時鑑定を使いっぱなしで運転をするのは……」
「せやから、わいとオヴァーニに任せて皆はんは荷台でゆっくりしておくんなまし。
着いたら忙しくなりそうやからね」
「本当に申し訳ありません」
「何を謝っておるのじゃ。
お主が考えを改めて話してくれたからこそ、こうして対策を練って行く事が出来るのじゃ。
こちらの方が感謝じゃよ」
「そうそう、それだけお姉ちゃんの身を案じてくれたんだからね。
オヴァーニだってもう私達の仲間なんだから遠慮は無しだよ」
「仲間‥‥私が……」
シゾンの言葉を噛み締めるように反芻するオヴァーニ。
「な、人間も悪いもんじゃあらへんやろ。
通ってきた町の人間みたいな奴らも当然おる。
でも、ここにいる人達みたいな人も沢山おんねん。
その全てを切り捨てて閉じ籠るなんて勿体無いと思わへんか?」
「ええ、そうですね。
だからこそ里は変わらねばならないのでしょう。
皆さん、若輩者ですがよろしくお願いします」
深々と頭を下げるオヴァーニに、クレアやシゾンだけでなく、カプスやイリスも笑顔を見せる。
こうしてやってきたエルフの里の入り口。
そこでは出迎えの為に多数のエルフ達が並んでおり、一番前には一際美しい女性……マタンが待ち受けていた。
「巫女様、並びにその従者の皆様方……よくぞお越し下さいました」
マタンが頭を下げるのと同時に後ろのエルフ達も頭を下げる。
「うむ、わざわざ出迎えご苦労じゃ。
しかし勘違いして欲しくないのじゃが、ここにおるのはワシの従者ではなく仲間なのでよろしく頼む」
クレアの言葉に後ろのエルフ達からどよめきが起こる。
しかし、マタンはその騒ぎを右手を横に上げて静める。
「先ずは長旅でお疲れでしょうから宿へご案内させて頂きます。
皆の者、頼みましたよ」
マタンの合図でエルフの中から数人が前に出る。
「お客人其々に部屋を用意していますので、彼らの案内に従ってください。
巫女様は私に着いてきてくださいますように」
「それではお願いしようかのう。
皆の者も慌てずに心穏やかに過ごすのじゃぞ」
クレアが何気なく言った言葉。
その意味を間違わずに受け取った7人は案内役のエルフについて行くのであった。




