逡巡
事前に魔法によるアンデルスト家に連絡を飛ばしていたクレア達。
次の日にはアンデルスト家の使用人達がやってきてナイラをアンデルスト家に送り届ける準備が整っていた。
「ワシらは暫く旅に出て留守にするでのう。
その間は、お主は我が家の客人として寛いでおってくれ。
店のことに関しては帰ってきてから話すとしよう」
「本当に何かなら何までありがとうございます」
深々と頭を下げるナイラを見送り、クレア達も出発する。
「あの町って今後はどうなるのかな?」
「僕の方から冒険者ギルドに今回の例を話します。
先ず冒険者は寄り付かなくなるでしょうね。
後はギルドネットワークで今回の村八分の件は全世界に広まる事でしょう。
そうならば態々好き好んで移住しようなんて人たちは出ないでしょう。
それでも敢えてこの町に移住しようという人間が現れたのなら……」
「この町に住む全員を相手にしても恐れないほどの悪党って訳やな。
いや〜数年語がごっつ楽しみになってきたわ」
イズの発言にキンハーが悪い顔で笑う。
最もこのメンバーのほとんどは内心で同じ事を思っていたのであるが。
「もう一つワシから話させてもらおう。
この町は阿良田商店のルートからは外させてもらう。
他にも行商人などはおるから品物が滞る事は無いと思うが……香辛料の類は二度と手に入らぬであろうし、仮に他の商人が届けれたとして阿良田商店の10倍以上の値段は付けてくるであろうな。
つまり、あのレシピは宝の持ち腐れというやつじゃ」
「一方でこれからは学園街の方でカリーが食べれるようになるんでしょ?
最高の結果だよね、流石お姉ちゃん」
「何の何の、元はナイラ殿の努力あっての賜物じゃからな。
それより帰ってからの楽しみが増えたのう」
「帰り……」
クレアが語った言葉を反芻するようにオヴァーニがポツリと溢した。
皆がワイワイと盛り上がる中で彼女だけが思い悩んで表情を浮かべていた。
彼女は何かについて悩んでいるのが分かる。
もちろんクレアやキンハーはその事に気が付いていたのだが、敢えて放置して旅を続けていた。
旅が三日目を経過し間もなくエルフの森に着くという所で一行はキャンプをしていた。
ワイワイガヤガヤと盛り上がるクレア達。
「あ、あの……」
そんな彼女達に対して、オヴァーニは意を決したように口を開いた。