村八分
「申し訳ございません!
まさかお客様に悪漢を追い出してもらうとは……」
気絶したチンピラを見下ろしながら店主が言う。
「言っただろう?
此奴らは下手な冒険者よりも余程強くて役に立つと。
折角だからさっきの話をしてみてはどうだ?」
「そ、そうですね。
ご迷惑でなければ……」
クレア達に異論は無いようで、恐縮しながらも店主は話を始めた。
「実はこの町の町長から脅されていまして。
実は私はこの町への移民者でして。
移民者には特別に土地を貸して商売の手助けをするという話に乗った訳です。
店を運営する初期費用なども負担してくれると言うことでこの話に乗ったのです。
どうにかお店も軌道に乗って評判を呼び、今では町で一番とも言われるようになったのです……しかし……」
そこで店主は一度大きく息を吐く。
「言いづらそうな話をすまぬのう」
「いえ、皆さんに聞いてもらいたので大丈夫です。
初期費用で借りたお金を返し終わった時でした。
突然、町長からこの土地を返して欲しいと言われたのです。
更にそんな話はなかった筈なのですが、初期費用で借りたお金に莫大な利子までついていまして。
そのお金を払えないなら建物とカリーのレシピも渡せと言ってきたのです。
そして、今まで払っていた土地代を急に10倍に吊り上げてきました」
「どんな強欲な奴やねん。
けったくそ悪い話やな」
「更に町の人達もグルだったらしく、あなた方のような外からのお客様しか見えず、食材も売ってもらえなくなってしまいました。
それでもナグモさんの商会とのやりくりで何とかしていたのですが……遂にはあのようなチンピラを雇って嫌がらせをするようになってきたのです」
店主が悲痛な面持ちでそう語ると、店内は一気に暗い雰囲気になってしまった。
「本当にいけすかねえ野郎だな。
その町長ってやつをぶっ倒しっちまえば良いんじゃないのかい?」
「カプス姐さん……それは厳しいっすよ。
町ぐるみだとそれをやったら私達の方が犯罪者ですし」
「ほんならその初期費用から降ってわいた利息について調べてみるとか?」
「どうでしょうね。
書類の改竄は済んでいるでしょうし、町の人達全員が証人として立ち上がれば無茶でも通りそうですよ」
「あの……そんなにこの土地に居場所が無いのであれば、全部向こうに渡して他所に移れば良いのではありませんか?」
「オヴァーニ、流石にそれは無理やで。
この建物もレシピも費用がかかっとるし……」
オヴァーニの言葉にキンハーが呆れながらもそれは無理だと説明しようとした時であった。
「いや、案外良い手かもしれぬぞ」
その意見に賛成したのは他ならぬクレアであった。