キンちゃん、再びやってくる
次の日、朝も早くから新たなる客がアンデルスト家へやってくる。
「まいど〜姐さんはおられまっか?」
やってきたのは冒険者ギルドに所属し、学園のソーサラークラスの教師をやっているキンハーであった。
「おお、キンちゃんではないか。
来てくれたんじゃな」
「なんやウチのがえろう迷惑かけとるようで、ほんますんません」
「よいよい、気にするでないわ。
それにキンちゃんの知り合いの可能性もあったので無碍には出来んよ」
「あ〜姐さん、その勘は大当たりですわ」
「巫女様、本日もご機嫌……な、何故貴方がここに!?」
談笑しているクレアの元を訪れたオヴァーニ。
だが、キンハーの顔を見るなり驚愕の色を浮かべ明らかに動揺していた。
「お前が姐さんに迷惑かけてるって聞いたからに決まってるやろ!
どうせ、あの頭の固い年寄り連中から焚き付けられたんやろうけど何しとんねん」
「さ、里を捨てた兄上に責められることなど何一つとしてありません!
巫女殿を連れて帰らねば里は滅びるだけなのですよ」
「か〜それが固い言うとんねん。
今までの事が通じないなら別のやり方を試していきゃええだけやろ。
いつまでも内に篭ってるから巫女さんも外の世界に出てきたんとちゃうんか?」
顔を合わせるなり言い争いを始める2人。
話の流れから2人は兄妹のようだが、確かに言い争いながらもこぎみの良い話のテンポが長い付き合いだと分からせてくれるようだとクレアは感じていた。
「まぁ、一旦おちついたらどうじゃ?
話から察するに2人は兄妹じゃったのかな?」
「ああ、こりゃ、えろうすんません。
お察しの通りにオヴァーニはわいの妹ですねん」
「巫女様、私からも謝罪を。
まさか滅びかけた里を捨てた恩知らずの兄上が巫女様と知り合いとは思いませんで」
「ふむ……どう言うことか聞かせてもらっても良いかのう?
ワシから見た限りキンちゃんはピンチになった里を見捨てるような人物には見えんのじゃよ」
「いえ、兄上は……」
「対立する意見がある時は双方の意見を聞かねば納得のいかない答えは出せぬ。
そして、お互いの話をキチンとぶつけねば仲直りをすることも……な。
じゃからワシはキンちゃんの話を聞きたいし、お主も聞くべきであると思う。
無理にとは言わんがのう」
「……分かりました」
クレアにそう諭されたオヴァーニは2人と同じテーブルの椅子に着席した。
「ほんま姐さんには敵わへんな。
仕方あらへんか」
キンハーは呆れたように肩をすくめながらも話を始めたのであった。