可愛い×可愛い
「うーん……絵になるわね」
家へと戻ってきた2人と一匹。
現在、イズはエリーに言われた通りに頭の上にナハトを乗せながら食事の準備をしていた。
「主人、重くは無いだろうか?」
「いえ、まったく。
肩に乗られると作業がしにくいので、頭の上の方が助かりますね」
「戦っていた時から思ったのだが主人は頑強であられるな」
ナハトはそう言ってイズの頭を傷つけないように気を付けながらその上をキープする。
「小さくて可愛い子と可愛いペット……正に最強の組み合わせだわ」
「我はペットなどでは……」
「その姿を見たらペットにしか見えませんよ。
私も可愛いという見た目の評価は受け入れているのですから、そこは諦めてください」
「ぐ、ぐぬぬ」
そうこうする内にイズはあっという間に支度を終え、テーブルには豪勢な料理の数々が並んだ。
「実に美味しそう、ではあるのだが……主人達で食べられる量のか?」
「別に多くないわよ。
それにこの後ちょっとした運動をする予定だから腹八分もいかないくらいよね」
「そうですね。
ナハトが何を食べれるか分からなかったので、肉食と当たりをつけてそちらのステーキはナハト用ですし。
問題なければ付け合わせのサラダもどうぞ」
「なんと……これは我の分であったのか。
サラダも問題なく食せるために頂こう」
ナハトはそう言って喜んで食器を持ち始めた。
「一応置いていたのですが食器類も問題なく使えるのですね。
それならば少しお待ちを」
イズはそう言って席を立ち、暫くするとナプキンを持って戻ってきた。
ナハトの後ろに回ると首元にナプキンを装着する。
「これで汚れる事もないでしょう」
「重ね重ねすまぬな」
「え〜ナハトだけズルい。
イズちゃん、私も私も!!」
その様子を見たエリーは子供のように駄々をこねる。
イズはそれを見越していたのか、着けていたエプロンのポケットからもう一枚のナプキンを取り出した。
「そう来ると思ってちゃんと用意してましたよ。
ほら、髪が邪魔だからあげてください」
「ん………」
イズの指示通りにエリーは自身の赤く長い後ろ髪を上へと持ち上げる。
やや褐色の首元が顕になり、そこにイズがナプキンを持ちつつ手を添える。
「相変わらず綺麗な肌で羨ましい」
「んん……イズちゃんの白い肌も……あ、うらやまひぃっ!?」
触れるか触れないか……ギリギリのラインをイズの手が通過していき思わず声が漏れる。
そして、手が触れた瞬間にエリーは甲高い声をあげてしまった。
「先生……じっとしてないとナプキンが着けられませんよ」
「そ、そんな事言っても……ひゃい!?」
プルプルと震えるエリーの首を抱きしめる格好になったイズは、顔を耳の近くに持っていき、耳元で囁くように語りかける。
「全く……先生は普段は強気の責めなのに、こういう立場になると一気に弱くなりますね。
ヨワヨワです、ザコザコです」
「そ、そうなの……イズちゃんに責められると私、唯のザコになっちゃうの」
「そんなザコザコな先生には……あっ」
耳元から更に前へと顔を動かし、2人の唇が触れ合いそうなほど近づいた時であった。
2人の方をじっと見つめるナハトと目が合った。
「我の事は気にしなくて良いのだが……せっかくの主人の料理が冷めてしまうのだけが心配であるな」
「そ、そうよイズちゃん。
せっかく貴方が作ってくれた料理なんですもの!
冷めない内に食べてしまいましょう」
「そうですよね。
今日は自信作なので美味しいうちに食べてしまいましょう」
ナハトの言葉に自分たちの世界から抜け出した2人は、顔を真っ赤にしながら食事を始めた。
その2人の様子を見ながら、やや呆れたようにナハトも食事を始めるのであった。
普段はエリーの方が攻めな雰囲気を出していますが、夜の方ではイズの方が攻めです。