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くにつほし九花烈伝〈レトロモダン活劇 第二幕〉  作者: 真野魚尾
第三章 暁月夜、仰ぐ東天に星宿の瞬くこと

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第45話 残り火よ、今こそ燃え上がれ

 呪いは、(ひゃっ)(けい)の身も心も獣へと変えてしまった。

 (たけ)り狂う獅子の身の丈は、(みお)を五、六割は上回る。その凶暴さは、これまで戦った強敵――悪魔や吸血鬼――にも引けを取らない。


「貴様らもまとめて『扉』への生贄(いけにえ)としてくれる!!」


 唸りを上げる爪牙を、拳脚を、澪は真っ向から受けて立つ。


「断る! これ以上あなたに罪を重ねさせない!」


 攻防一体の太刀筋が猛攻を(さば)き切る。その隙に死角から奇襲を仕掛けるのは、ラリッサだ。


「こっち向きんさいや!」


 凍気を帯びた斧刃が敵の背に十字傷を刻み込んだ。すかさず上方からはカミーユの追撃が行われる。


「撃てぇっ! 〈嘯風牙(ガスタウィンド)〉!」

「〈煌炎破(インフレイム)〉ッ!」


 立て続けにジャンルカの術が爆炎の華を咲かせた。

 (ひゃっ)(けい)は――いささかも怯まない。


「所詮は寄せ集めどもか……笑止ッ!」

「んぐ……っ!」


 強引な反撃を防ぎそこねたラリッサが、大きく跳ね飛ばされる。


「俺がカバーする!」


 (けん)()が間へと滑り込み、敵を牽制(けんせい)しつつラリッサへ治癒の波動を送った。


「ありがとう。はぁ平気じゃ」

「よかった。澪姉は――」

「こっちは任せて……と言いたいけど、なかなかしぶとい相手ね」


 百慶の強靭な体躯は、厄介なことに再生能力をも有している。(みお)の持つ霊刀・(みお)(つくし)天玲(てんれい)の効果をもってしても、傷の治りを遅らせるのが精一杯だ。


「抜かったな。地の利は我に有り!」


 開きかけの『扉』から流れ込む魔界の空気――(しょう)()(ひゃっ)(けい)に味方していた。

 いや、正確には百慶「にも」と言うべきだ。


「お生憎(あいにく)さま。こちらには魔界生まれがついてるんだから!」

成程(なるほど)。獣憑きと悪魔憑き、互いに(あつら)え向きの相手というわけだ!」


 内に宿る悪魔・カーヴェが瘴気を取り込み、(みなぎ)る力を(みお)に与えてくれていた。百慶と同様、負傷を物ともしない疲れ知らずの身体は、常道破りの戦いを可能とする。


 澪と百慶、丁々(ちょうちょう)発止(はっし)の激しい攻防は拮抗する。接戦を抜け出すには、仲間たちの協力は不可欠だった。


「やっちゃれ! (けん)()くん!」

「〈黎明断(れいめいだん)〉!」


 前衛――(けん)()とラリッサ。


「煌々たる(ほむら)(たぎ)りを、(ほとほ)(たなごころ)に灯し、燃やし、其を(はぶ)れ――」

「おっさん、同時に行くぞぉ!」


 後衛――ジャンルカとカミーユ。それぞれに息の合った挟撃を臨機応変に仕掛けていく。

 次第に流れが掴めてきた。いつしか味方側の被弾は減り、敵側へは負傷が蓄積していった。


「このまま一気に押し切るかぁ!?」


 カミーユが頭上で息を巻くと、


「油断しちゃダメだ」献慈が釘を刺す。「さっきまでと動きが違う!」


 事実、(ひゃっ)(けい)の立ち回りが変化しつつあるのを、(みお)も察していた。

 その正体に最初に気づいたのは、ラリッサだ。


「このリズムは……(ひょう)流じゃ!」

「ハァアアァ――――ィッ!!」


 横薙ぎの裏拳が澪を襲う。


「〈颱翻(たいほん)〉!」


 回避とともに逆袈裟で腕を斬り落とす――が、百慶の体は回り続ける。


(……わざと斬らせた……!?)


 考える間もなく、続けざまの掃腿がラリッサを後退させた。


「フェイント!? そっちじゃ! (けん)()くん!」

「わかって……る――っ!?」


 勢いを止めず、縦回転へ移行した(ひゃっ)(けい)が浴びせ蹴りを見舞う。防御してなお床が割れ沈むほどの威力に、献慈の表情が歪んだ。


 それで終わりではなかった。百慶は献慈を踏み台に、宙高く飛び蹴りを放つ。


「〈鳴動蛟(めいどうこう)(りゅう)()〉!!」

「んだっ……どほォ――っ!?」


 カミーユは不意打ちを避けきれず衝突、墜落する。空中では急移動できないことを、百慶は見抜いていたに違いなかった。


「……小娘が……ッ」


 着地した(ひゃっ)(けい)はわずかにバランスを崩す。胴体に刻まれた大きな裂傷は、喰らい際のカミーユが一矢を報いた証だ。


 百慶はカミーユを深追いしない。おそらくは、すでに果たされていたからだ――こちらの陣形を崩すという目的が。


 殺気立つ獣の眼差しは、無防備なターゲットへ注がれていた。


「ジャンルカ!」

「ジャンパイ!」


 (みお)とラリッサが同時に助けに向かうが、敵味方の距離の差は明白だった。

 迫り来る敵の射程内で呪文を唱え始める、ジャンルカの心の内は如何(いか)ばかりか。


「煌々たる焔の滾りを……――」

「遅いわッ!!」


 (ひゃっ)(けい)が踏み込むや否や、ジャンルカはあっさりと詠唱を切り上げた。


「――なんてなァ」


 突き出した拳を握り締める、おなじみのポーズに呼応して、一際(ひときわ)大きな爆炎が炸裂する。術は破棄されていなかったのだ。

 それどころか、威力も段違いに増している。


「ぐぁは……っ、無詠唱……だと……!?」


 灼熱の炎に包まれながら、(ひゃっ)(けい)はその男を(あなど)った後悔を噛み締めていただろうか。


 渦巻く魔力の奔流に真紅の髪をなびかせ、ジャンルカは突き立てた親指を『扉』に差し向ける。


(わり)ぃな。生まれ故郷がオレにも力を貸してくれるってよ」


 勇ましく立つ魔術士の双眸(そうぼう)に、かつてない闘志が燃えていた。

★ジャンルカ(大火) イメージ画像

https://kakuyomu.jp/users/mano_uwowo/news/16818023213049500200

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