これはデート
玲音はアイリと手をつないだまま、映画館の前まで来た。
小学生の女の子とはいえ、手をつなぐのは少し恥ずかしい。道行く大人達は微笑ましいものを見るような目で見ている。
(前世ではそんなこと、ほとんど経験もなかったし……)
アイリははにかんだような笑みを浮かべ、少し嬉しそうにしていた。
お見合いのときの怯えた表情より、こっちのほうがずっと可愛い。
「ね、何を見る?」
アイリに尋ねられ、玲音は考えた。
子供でも見られるものが良い。アニメ映画あたりが良さそうだ。
とはいえ、ここは先にアイリに意向を優先させた方が良いかもしれない。それで希望がないようであれば、実際にアニメ映画を提案しよう。
玲音はアイリに尋ねると、アイリは考え込んだ。
そして、アイリは映画館のチケット売り場をきょろきょろと見て、壁のポスターを指差した。
「あれ……とか」
その映画はどう見ても、少女漫画原作の恋愛映画だった。『君がいた』というタイトルで、ポスターには彼氏彼女らしき高校生が写っている。
とても甘そうな内容だ。
玲音は心配になった。
「ちょ、ちょっと大人な内容すぎない?」
「そう? 普通だと思うけど……」
アイリは首をかしげた。
「でもさ、恋愛なんて俺たちにはまだ縁はないし……」
「クラスの女の子とか、みんなかっこいい男の子の話とか、誰が好きだとか話してるよ?」
「……女子はませてるなあ」
「見神くんだって子供なのに。変なの」
アイリはくすくすっと笑った。
それはそうだ。自分でも変なことを言ったと思う。うっかり中身が大人だとバレないように気をつけないといけない。
「少女漫画とかよく読むの?」
玲音が尋ねると、アイリはぱっと顔を輝かせた。
「うん、そうなの!」
そして、アイリは少女漫画のタイトルを挙げて、とても熱く語った。
転生後の玲音は知らないタイトルの漫画ばかりだ。けれど、好きなものを楽しそうに話すアイリは、なかなか可愛かった。
「面白そうだから、今度貸してもらってもいい?」
「もちろん!」
アイリはふふっと笑う。少し仲良くなれた気がする。
というわけで、アイリの提案通りの恋愛映画を見ることになった。
「デートで恋愛映画を見るなんて、彼氏彼女みたいだね」
アイリが言い、玲音はドキッとする。玲音がアイリを見ると、アイリは青い瞳で玲音を見つめ返した。
「これはデートだもん。見神くんはそうは思っていないかもだけど」
アイリは少し顔を赤くして、すねたように言った。
面白い、続きが気になる、ヒロインが可愛い!と思っていただけましたら
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