新城アイリ
お見合いの場の応接間は、シャンデリアもある豪華な空間だった。
さすが大企業の経営者の豪邸。
その手前側の白いソファに、玲音と愛乃は腰掛ける。
「お相手は新城アイリさんって言うの。玲音くんと同じ10歳。小学四年生ね」
愛乃が玲音に説明する。
「どうして俺とお見合いすることになったの?」
「新城家は名門の家だけど、経営する新城自動車の業績が良くないなの。つまりお金がないのね」
小学四年生の玲音のために、愛乃がわかりやすく言い直す。中身は大人なので、言い換えなしでも玲音は理解できるが。
「お金のために娘を売るような真似をするなんて、信じられないよね」
愛乃は憤慨したように言う。息子を溺愛している愛乃の立場からすれば、新城家の行動は許せないのだろう。
ただ、当人たちにとっては必死なのだとは思う。見神グループは富も権力もあるから、他人にへつらう必要がない。そうでない人たちは、必死で生きていかなければならないのだ。
それは転生前の玲音も一緒だった。
やがて、部屋に一人の中年男性が入ってくる。ごく普通のスーツ姿の男性だ。彼が新城家の当主なのだろう。
そして、その後ろに――驚くほど美しい少女がいた。
10歳より少し大人びて見えるだろうか。人気の子役やローティーンのアイドルのように顔立ちは整っている。
しかも金色に輝く長い髪、そして翡翠色の淡い瞳。どう見ても、外国系の血が入っている。青いワンピースがよく似合っている。
神秘的、というのが少女の印象だった。
見とれてしまい、玲音は親同士の挨拶もろくろく頭に入っていなかった。
やがて、少女がぺこりと玲音に頭を下げる。そして、おどおどとした様子で上目遣いに玲音を見る。
「は、初めまして……新城アイリです」
「はじめまして。僕は見神玲音」
玲音は、アイリを安心させるように微笑んだ。アイリはこくっとうなずく。
だいぶ怯えているな、と思う。同時に、新城家の当主の、アイリを見る目の冷たさにどきりとする。
この家族のあいだには、なにか問題があるのかもしれない。
いくらか愛乃と新城当主のあいだで、なごやかな会話がかわされる。内心はともかく、愛乃は見神グループを代表する当主夫人の立場であり、名門の新城家には丁寧に接していた。
やがて、「あとはお若い二人で」と愛乃が冗談めかして言う。若すぎるだろう、と玲音は内心で思う。
だが、愛乃と新城家の当主はともに立ち上がり、部屋から去ってしまった。
残されたアイリはびくっと震える。
そして、急に涙目になった。玲音は慌てた。まだ何もしていないのに。
「ひ、ひどいことをしないで……!」
「え?」
どうしてアイリが怯えているのか、玲音はわからず混乱した。
ただ、玲音にできることは多くない。
玲音はそっとアイリの手を握った。アイリが震えを止める。
「大丈夫。僕は君の敵じゃない」
「本当に……?」
「ああ」
玲音はこくりとうなずいた。
メインヒロイン!
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