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転生したら可愛い妹がいた

 コンビニからの帰り道。

 その男は殺された。


 彼の人生は、何も良いことがなかった。

 幼い頃、両親はいつも喧嘩していて、やがて離婚した。学校ではいつも一人ぼっち。


 やがて新卒での就職に失敗し、無職のまま資格試験に挑むも落ち続け……。 

 なんとか潜り込んだIT企業は超ブラックで、二年ほどで心を病んで退職した。


 貯金と傷病手当金で生きる日々。一人暮らしで、恋人も友人もいない。

 引きこもり生活のなか、買い出しだけには出ないといけない。そして、冬の夜のコンビニに行ったときに事件は起きた。


「きゃあああっ!」


 若い女性の声が響く。

 帰り道。ナイフを持った通り魔に金髪碧眼の美人女性が襲われていた。どうやら妊婦のようで、逃げ遅れたらしい。


 とっさの行動だった。男は通り魔の目の前に飛び出て……もみ合ううちにナイフで腹部を刺された。


 彼は地面に倒れこんだ。血が大量に出ているな、と薄れゆく意識のなかで思う。視界も暗転して、自分がこれから死ぬのだと直感した。


 どうやら通り魔は取り押さえられたらしい。


 女性はたぶん助かった……のだろう。

 それなら良かったと思う。


(何もできなかった俺の人生にも、唯一意味があったことになる。


 でも、もう一度生まれ直すことができるなら――。


 今度は幸せな人生を送りたい。一度だけでなく、ずっと誰かの役に立つ人生を送りたい。

 彼はそう願った。





 目が覚めた。病院……と思ったけれど、違うらしい。

 

 暖かな朝日が差し込む部屋だ。9畳ぐらいはある広い部屋だが……。


(子供部屋……?)


 直感的に、小学生ぐらいの男の子の部屋だとわかった。

 ゲーム機とか、カードゲームのカード、漫画。そういったものが散らかり放題になっている。


 ただし、かなり裕福な家なのか、勉強机はマホガニーの高級品だし、遊び道具も贅沢なぐらい揃っている。


 頭痛がする。自分の手を見ると、とても小さい。

 慌ててベッドから起き上がり、姿見を眺める。鏡に映ったのは、自分の姿、つまり通り魔に襲われた男の姿ではない。


 10歳ぐらいの少年だ。けっこう美少年というか、目も大きいし、なかなか可愛い。

 

 混乱する彼の頭の中に、別人の記憶が流れ込んでくる。


 この少年、つまり今の自分の名前は見神玲音(みかみれいん)

 見神グループという大財閥の子供だ。当主の父と、その妻の元女優の長男。


 名門私立小学校に通う四年生。家柄にも家族にも恵まれ、勉強も運動も得意。

 何一つ不自由せずに育った子供だ。

 

(これが今の俺……?)


 呆然とする。

 理解が追いつかない。いわゆる転生なのだろうか。


 そうだとしたら、元の見神玲音本人の人格はどこへ消えたのか?

 だが、少なくとも今は、自分が玲音だ。


 転生した男は――いや、玲音は首を横に振った。


 ともかく、起きたことは受け入れざるを得ない。

 それにこれはラッキーかもしれない。


 最高に恵まれた環境で、人生をやり直せるのだから。

 だが、そんな考えはすぐに間違いだと思い知らされる。


 ノックの音とほぼ同時に、扉が勢いよく開く。

 飛び込んできたのは、幼い少女だった。玲音よりもたぶん年下だ。


 つややかな黒髪に、清楚なワンピース。

 かなり可愛いお嬢様という感じ。


「玲音兄さんは本当にクズですね? いつまで寝ているんですか?」


 玲音の妹・見神琴葉(9歳)は腰に手を当て、仁王立ちしていた。


(なるほど。この美少年の玲音の妹なら、可愛くて当然か……)


 だが、彼女の黒い大きな目に、憎悪の色が浮かんでいるのを見て、玲音は怯んだ。

 そして、玲音は今まで琴葉に行ってきた嫌がらせの記憶が蘇る。


 これまでの玲音はあまりにも甘やかされすぎて、そして才能を持って生まれたせいで……傲慢でとてもとても嫌な子供だったのだ。


 そういうわけで琴葉からも、玲音はかなり嫌われているらしい。


 玲音(の中の男)は慌てた。玲音が琴葉にしてきたのは、おもちゃを取り上げたりとか、突き飛ばしたりとか、からかったりとか、子供らしい行動ではある。


 とはいえ嫌われるのには十分な行動だ。

 琴葉は頬を膨らませている。


「兄さんみたいな人が、見神グループの後継者だなんて本当にありえない! いつも寝坊してくるし、お母さんにはわがままばかり言うし、傲慢で周りの人みんなを馬鹿にしているし……私、兄さんのことが大嫌いです」


「と、とりあえず、寝坊してごめん」


「へ?」


 琴葉が一瞬で、呆然とした表情をした。


「どうしたの?」


「あ、あの絶対に他人に謝らない玲音兄さんが、こんな些細なことで謝った……!?」


 玲音少年の評価の低さに、愕然とする。だが、つまり、まともに振る舞うだけで、これまでの悪評はくつがえせるかもしれない。


 次の手に出てみる。

 玲音は微笑んだ。


「いつも起こしに来てくれてありがとう、琴葉」


 言われた琴葉はフリーズした。

 玲音は少し考えて、さらに押してみることにした。


「琴葉みたいな可愛い自慢の妹がいて、俺は幸せだよ」


 さすがにわざとらしいか、と思ったけれど、これは本心である。

 こんな美少女でしっかり者の妹がいたら、男ならみんな泣いて喜ぶだろう。前の人生でもこんな妹が欲しかった。


 琴葉はみるみる顔を真っ赤にした。

 そして、廊下に飛び出す。


「れ、玲音兄さんがおかしくなっちゃった!!!」


 取り残された玲音は肩をすくめ、そして、ふふっと笑った。




人生やり直しのハイスペック少年が、婚約者の少女を10歳から溺愛して幸せにするまでの一生です!


面白い、続きが気になる、更新頑張って!と思っていただけましたら


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